幼き日のオママゴト
ひよく
幼き日のオママゴト
私はキミに初めて会った日を覚えていない。
キミだってそうでしょ?
私達は幼すぎたから。
近所の草むらまで探検に出発。
おみやげはネズミの死骸。
これには母親達が悲鳴をあげた。
2人で夢中になったファミコン。
あんまり熱中し過ぎて、やっぱり怒られたね。
あの時のスーパーマリオブラザーズ、まだうちにあるんだよ。
だけど、そんな2人の可愛らしいお付き合いは、小学校までで終わってしまった。
中学に上がったキミは変わってしまった。
学校をさぼり、タバコを吸う。
そんなキミとは、もう遊んではいけないと親に言われた。
私はキミと距離を置くようになった。
親に言われたからじゃない。
私にはなりたいものがあった。
そのためには、‘進学校’と呼ばれる高校に進む必要があった。
キミとの時間より、塾通いを。
キミとの絆より、内申書を選んだ。
私は希望通りの高校、希望通りの大学に進み、希望通りの職に就いた。
キミの事など、すっかり忘れて。
毎日は充実していた。
そうして、中学卒業から15年。
15年ぶりの同窓会。
15年ぶりのキミとの再会。
キミはすぐに私だとわかったというけれど、私は言われるまでキミだとわからなかった。
キミはすっかり大人の男になっていた。
キミと話しているうちに、2人で話したくなって、一緒に同窓会の会場を抜け出した。
キミと一緒にいったのは、近くのファミレス。
「飲みじゃなくていいの?」
と訊くと
「もう結構、飲んでるから。これ以上、飲んだら、お前を送って帰れないだろ」
キミは何も言わないのに、禁煙席を選んでくれたね。
「タバコ、吸わないの?」
タバコは中学時代から吸っていたはず。
「お前は嫌いなんだろ。見てればわかるよ。」
それから、2人でいろいろな話をした。
一時期グレていたキミだけど、今は真面目なんだね。
仕事について、熱心に語るキミが素敵だった。
あの頃、キミを切り捨てた私なのに、屈託なく、昔のまま接してくれたのが嬉しかった。
そして、お互いに今は恋人がいる事もわかった。
私達の恋は、‘幼き日のオママゴト’
それでよかったんだね。
幸せになってね。
私も負けないくらい、今、幸せだから。
幼き日のオママゴト ひよく @hiyokuhiyoku
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