ちょこあじ
化け物とわたし。
やっほ~!るるだよ。覚えてるかな?それともその矮小な脳味噌じゃあボクのこと忘れちゃってるのかな~?まあいいや。ぽよよ~ん!ポッキーの日だよ!
「……小鳥遊さん!授業中にどこ向いて喋ってるんですか!?」
うう~ん、せんせえうるさ~い。
「小鳥遊さん!……『tan1゚が無理数であることの証明』をして下さい。」
え~めんどくさいなあ。なんだか教室もざわついてきたし嫌だなあ。
「えーっと、tan1∘ が有理数であると仮定して矛盾を導く。tan の倍角公式より、tanαが有理数なら tan2αも有理数。よって,tan2∘,tan4∘,⋯,tan64∘も全て有理数であることが分かるよ。また、
tan の加法定理:tan(α−β)=tanα−tanβ1+tanαtanβ
よりtanα,tanβ が有理数ならtan(α−β) も有理数。よって 64−4=60
なので tan60∘ も有理数。しかし tan60∘=√3なので矛盾してる。√3は無理数だからね。」
ふー。息が続くかしんぱいだったよ〜。
「……はい。ありがとうございました。」
それにしてもポッキーの日かあ。ボクも女の子とポッキーゲームしたいな~。そうだ!いいこと思いついた!
全神経を研ぎ澄ませ、画面に表示されたボタンを押す。演出は……銀が一体!
「あ"っっっ!!!爆死したッッッッッ!!!」
「10連?乙~ww」
やってられない。課金するか……?
「あっ、私ら帰らなきゃいけねえ。じゃあまた明日。」
おっ、ばいばーい。
教室の中にはわたし一人。
「ゆかりちゃん、一緒にポッキーゲームしよ?」
「るるちゃん?!」
はっ?一体どこから……?
「そうだよるるだよ!さあ口を開けて?」
いきなり出てきたと思ったら、何を言ってるんだこいつは。
「ゆかりちゃんかわいいね……。恥ずかしがらなくていいんだよ?」
駄目だ話が通じない!
「いや、しないけど?!」
「ええ~やだやだボクもポッキーゲームしたい~」
他の人とやってよ。
「ボクはゆかりちゃんじゃないとやなの~!」
……はあ。
「仕方ないな。ちょっとだけだよ。」
「ありがとう!じゃあこれね!」
はあ?何度瞬きをしてもそこにあるのは真っ赤な鉄の棒。明らかにポッキーではない。なんで素手で持てるんだよ。
「正気の沙汰でない!」
「はい、あーん?」
いやお前お前お前!!!!!!
「仕方ないなあ。ボクが口を開けてあげる。」
「あ"がっ!!」
「かわいいぴんくの口内だね♡真っ白い歯と
は~~~相変わらずやべえな。この前よりやべえ。
ジュッ
熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!細胞の死滅を生きたまま感じるなんてそうそうないことだと思う。頬をぼろぼろと涙が伝う。……今回は許さん!
「痛い?熱い?どんな感じ?涙を流すゆかりちゃんもかわいいよ♡ボクも反対側から齧るね?」
涙で殆ど何も見えないが、るるの顔が近くにあるのがわかる。そしてばりばりと鉄の砕かれる音がする。その音はどんどん近づいてきて……
私の唇とるるの唇が重なった。
「はわわ~!ちゅーしちゃった~!」
ええい、煩いやつだな。わたしは口に残った鉄をさっさと噛み砕いて、焦げ付いた口を開く。
「あのさ、わたしはちゃんと痛みも熱さも感じるし一応怪我するの知ってるよね?」
「すぐ治るからいいじゃ~ん。」
いや許さん。お前明日から1週間わたしと一切の連絡をとるな。
「ふえぇ?!ゆかりちゃんと1週間お話出来ないなんてつらすぎるよ〜」
「明日から、な。」
「じゃあ今日はいっぱいお話して帰ろうね!」
「仕方ないな。」
わたしとるるは手を繋いでもう暗くなった校舎を後にした。
化け物のわたし。
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