きゅうさいあじ
私はベッドの上で、
足をぷらぷら。
心もぷらぷら。
頭もぷらぷら。
ふわーん、ふわーん、ふわふわわ。
私はここに居た。冒涜的な鐘の音が、始業を告げる。預けなかった文明の利器が掌でバイブレーションする。青空に飛ぶ白い鳥が運ぶ戯言の波を、どんどん遡ってゆく。白い彼女が鮮やかな赤に包まれている。薄紫の彼女が信号機を愚弄している。珊瑚の彼女は今日もアイスクリームを落としたみたいだ。
かわいいかわいい愚かでかわいい。
どうしようもない妄執に取り憑かれて透明な鳥籠の中を彷徨っている。ここは私のワンダーランド。おっと、現実に引っかかっておかなきゃ不味い。私は未だに平方完成を理解していないのだ。白い彼女に聞こうかな。
終業を告げる解放宣言の鐘が鳴る。白い彼女に教えてもらわなければ。私は彼女に話しかけ、図書館にエスコートする。彼女はもう疲れたと言う。蚯蚓脹れだらけの腕に赤茶色の線が増えていた。ふふふ、大丈夫。あなたはなんにも悪くないよ。辛い?苦しい?どうにもならない?もどかしい?うんうん、すごく努力してるんだね。そんなことない?ううん、そんなことあるよ!仮にあなたが凄くないとしても、私はあなたが大好きだよ。ほら、私に数字の魔法を教えて?
彼女の持つシャープペンシルが踊る。次々と生み出される数列は、まるで芸術のようで。私には露ほども理解出来なかった。
白い腕を振って彼女と別れ、公園でひと休みする。ブランコの下に使用済み避妊具が落ちていて、蟻が群がっていた。
私はブランコの上で、
足をぷらぷら。
心もぷらぷら。
頭もぷらぷら。
ふわーん、ふわーん、ふわふわわ。
いつの間にやら家のベッド。朝が来るのを怯えて待つ。冴え冴えと輝き渡る月が、私を見下している。ああ、お月様、お月様。言うことなんでも聞きますから、もう少しだけ生かしてください。
秘色に明ける空を見ないまま、夢を見ていた。
始業から終業までを、無味乾燥に過ごしたあとは、珊瑚の彼女と図書館へ。彼女の臓器を愛でて、足りないものを埋める真似事をした。真似事では隙間は埋まらない。益々押し広げられた心は竜胆色。それでもそれでも構わない。仮初の愛はからっぽの心を蕩けさせるから。
珊瑚の彼女に別れを告げて、私はバスに乗り込んだ。
私はバスの座席の上で、
足をぷらぷら。
心もぷらぷら。
頭もぷらぷら。
ふわーん、ふわーん、ふわふわわ。
ふわーん、ふわーん、ふわふわわ。
泡の様に生まれては消える「日常」に、
最大級の罵倒を。
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