いちごじゃむあじ

「のり貸して。」

「ん。」

貴女は小さく返事をして、こちらにスティック糊を投げて寄越す。貴女の一挙一動が、愛おしくて堪らない。貴女の幸せが、私の幸せ。あっ、笑った。貴女の笑顔は眩しいな。貴女に出会ったのは、3年前の事だったっけ。桜並木の下に佇む貴女は桜の精のように美しかったっけ。ふふふ、今思い出すだけでもうっとりするな。嗚呼、貴女を私のものにしたい。そう、私は3年も待った。3年も準備に時間を掛けたのだ。もう十分なはずだ。

私の前に貴女がいる。三角木馬に乗せられて、腕と脚を縛り付けられて。口には大きな口枷が嵌められていて、その隙間からぼたぼたと滴り落ちる唾液はとても淫靡に糸を引いている。嗚呼、なんて素敵なんだろう。貴女は永遠に私のもの。

さあ、貴女の瞳が絶望で濁る前に、次の準備を始めよう。貴女にお腹の開いた純白のドレスを着せて、純白のベールを飾らせて、純白のベッドに寝かせよう。もう、貴女ったら。嬉しいからってそんなに動かないで。そうだ、魔法の薬を打ってあげよう。きっとすぐ、穏やかになれるはず。…うん、動かなくなった。貴女の心臓の音だけが、この部屋に響いてる。眠った貴女もとっても素敵だ。貴女を特別なベットに横たえて、秘密の戸棚からナイフを取り出す。蝶々と百合の花が彫られている、特別製のナイフ。貴女との思い出を焼き込んだ。よく研がれたナイフは、まるでバターをナイフで切るように、貴女のお腹に線を入れる。その線からとろとろと流れる鮮血は、私にとっては甘美な蜜だ。貴女のその割れ目をなぞり、つぷりと手を入れる。どくどくと脈打つ貴女の中は、温かくて柔らかい。堪らず手を動かす。手の動きに答えるようにして、貴女の中が痙攣した。私は貴女の中を探って、脈動する臓物に触れる。そして、ずるりと引き出した。嗚呼!鉄の匂いと迸る赤!じゅるじゅるとした小腸が私の手から滑り落ちる。堪らず再び体内を弄る。腎臓を引きちぎり、大腸を放り投げ、子宮をさらけ出す。傍らに置いていたナイフを取り、子宮に穴を開ける。瞬間経血が溢れ出す。私はそこに顔を突っ込んだ。鉄錆の匂いと腐ったチーズのような甘酸っぱい匂い。幸せ幸せ。私はとっても幸せだ。顔を上げ、心臓を見ると動くのを辞めていた。ようやく、私と貴女は一つになれる。貴女の指先を口に含み、ぶちりと嚙み切って咀嚼する。端から、少しづつ少しづつ貴女が私の中に取り込まれていく。愛している。愛している。愛おし過ぎて意識が飛びそうだ。

ふと昔のことを思い出す。もうこんな記憶必要ないのに。貴女が話しかけてくれた時のこと。たまたま班が一緒になっていてプロジェクトを協力して仕上げたこと。何故だか話が合って2人でずっと話したこと。部活が終わるまで貴女が待っていてくれたこと。2人で一緒に帰った日のこと。別れて帰る途中もドキドキしていたな。ふふ。あの時、転んだのは内緒だ。

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