なつやすみあじ

平成最後の夏休みが終わりを告げようとしている。同級生達は夏休みの怠惰な生活から重い腰を上げ、始業式に向かうのだろう。

時刻は午後11時57分。そろそろ時間だ。

思えば、今年の夏休みも色々あったなあ。友人とプールに行ったり、かき氷を作って食べたり。夏祭りで偶然好きな人に会ってしまって、気恥しい思いもしたんだっけ。楽しかったなあ。でも、物凄く空虚だ。どれもこれも他人事のようで現実味がない。そうだ。「友達」って言ったって全然仲良くないし、「好きな人」だって勝手に自分が好きでいるだけであって、アプローチを掛けたことなんて1度もない。

…ともだち、かあ。僕に本当の「友達」がいたならこんな事にはならなかったのかな。過ぎた事は仕方がない。今更何かを思った所で全てが手遅れだ。時刻は午後11時59分。

僕の目の前にあるのは崖の一番端と広がる海。荷物を全て下ろして靴を脱ぐ。

僕は崖から飛び出して、一瞬空を飛んだ。そして深夜の海に消えていった。時刻は午前0時0分をさしている。平成最後の夏休みは、僕の命と共に終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る