第3話 牡丹と薔薇

「牡丹と薔薇」

それは、ジェットコースターの様な急展開の昼ドラで当時多いに流行っていた。


「さとうちゃーん、昼休憩後で行ってもいい?」

「あー、別にいいよ。昼ドラでしょ」

「そう!良いところなの!!」

「ちゃんと休憩時間終わったら帰ってきてよ?」

「もちろんもちろん!」

こういう事だけは、朝の申し送りの直後に取り付けるおばちゃんナースの逞しさに感動すら覚える。

そしてここのところ、大体昼残りがおんなじ顔ぶれ。興味のない若者ナース達。

「あ、あつき!」

「おーう!えー、どうしたの?何か用?」

「ボタバラ見に来たーっあっ始まるっ」

呆気にとられて休憩室に滑り込む同僚の背中を見つめていると、

「上映会みたいになってるみたいですよ。昨日は他の部署からも集まってきてました。」

呆れるでもなく、淡々と言いながらカルテを開く後輩に思った。「めっちゃ冷めてる〜」


休憩時間の終了と共に、サ○エさんのエンディングの様に狭い休憩室から次から次へと出てくるナース達。

「いやー、面白かったわー。教えてあげようか、内容。」

「いや、結構です。ここまで聞こえてました、オーディエンスの声も含めて。」


暫く牡丹と薔薇の上映会は大っぴらに続けられた。

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