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 10-①


 “あいつら”が、世界を繋げて侵入してきた。


 圧倒的な大群だった。侵入してきたあいつらに、私達の世界は蹂躙された。向こうの世界に反撃を試みた者達は、そのことごとくが返り討ちにあい、戻ってきた者はほとんどいない。

 昨日も、街が一つ焼き払われた。

 あいつらに、親も、兄弟も、仲間も、みんな殺された。

 親はバラバラに斬り刻まれ、兄弟は焼かれ、仲間は吹き飛ばされた。

 あいつらは私達を一人残らず殺す気だ。


  “どおおおおおおおおん!!”


 そう遠くない場所で爆発音がした。爆発音がした方角を見ると、凄まじい火柱と黒煙が上がっている。あれは……隣の避難所だ。安全な場所を求めてここまで逃げて来たが、遂に奴らがすぐ近くまで迫って来たのだ。

 すぐさま逃げる準備をしようとしたが、あいつらはその時間を与えてはくれなかった。避難所中央の広場に突如として裂け目が出現したのだ。


 “ざっざっざっざっ……”


 中から足音が聞こえて来た。大勢いる……あいつらだ。裂け目の向こうからあいつらがやって来る。避難所は大パニックになった。

 私は咄嗟に裂け目の近くの物陰に隠れて、様子をうかがった。


  “ざっざっざっざっ……”


 裂け目からあいつらが現れた。数は100を超えているだろうか。リーダーらしき個体が “にぃぃぃっ” と笑って何かを指示すると、奴らは四方に散った。少しして、あちこちで悲鳴と怒号が飛び交い始めた。殺戮が開始されたのだ。

 あいつらの言葉は分からないが、リーダーらしき個体が何を言ったのかは想像がつく……『皆殺し』だ。


 この世界は……終わる。


 生き延びる方法はもはや一つしかない。危険だが、奴らが作った裂け目を通って、向こうの世界に渡るのだ。奴らの群れが四方に散って、裂け目の警備が手薄な今がチャンスだ。私は、向こうの草むらに石を投げ込み、あいつらが気を取られた一瞬の隙を突いて裂け目の中に飛び込んだ。

 どれくらい歩いただろう、とうとう私は出口に辿り着いた。

 ……ここが、あいつらの世界なのか。







 ……裂け目の向こうには、不気味な青い空がどこまでも広がっていた。


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