第31話ぼくの恋はあどけない

12月1日

31 いつか青空

1P 8.29 Tuesday

●書見機(本日退院する飯塚氏より)200円で譲り受ける。

●大野寛君がぼくの家からサルトル全集を持ってきてくれた。

●まことにグットタイミング。書見機を使えば本を支えるのに手が疲れないから長時間読書に励める。うれしいな。

●それにノートだって仰向けに寝たままで付けられる。小説を書きだそうとおもう。このままへこたれて、小説を書くことからとおざかってなんかいられるものか。

●意気軒昂。やるぞ。書くぞ。読むぞ。がんはろうとおもった。

●あさからすべてがいいほうへむかっていた。しばらく見つからなかった4Bの鉛筆がでてきた。これで小説を書き出せという神のお告げか。

●あすは、水曜日彼女が来てくれるはずだ。

●ぼくが小康を得ているところを見てもらいたい。

●このままぐんぐん良くなることをただ望むのみだ。

●入院してから、きょうが咳もあまりでないで、すごく気分がいい。

●はやく彼女と喜び合いたい。このまま快癒にむかうだろう。と楽観的になっているぼく。

●はやく美智子さんに会いたい。

●サルトルを読んでいるときのぼく。

●美智子さんに恋い焦がれているときのぼく。

●ぼくの恋はあどけない。それでいいではないか。コドモのような恋。それでいいではないか。はやく、彼女にあいたい。小説を書きだせそうだと告げたい。彼女も喜んでくれるだろう。


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