第30話彼女の手をにぎって、うとうとした

11月30日

30 いつか青空

P 8.27 Sunday 体温 6―7.3

●彼女来る。髪と足を洗うのを手伝ってもらう。

●ひと月も風呂にはいらないので、足を洗っているとポロポロおもしろいほど垢がでた。

●その下から、ようやく人間らしい皮膚があらわれた。

●入院患者のみなさんは、風呂に入れないのが辛い、とこぼしている。

●ぼくは、根っからの風呂嫌いだから平気だ。

●でも異臭をはなっているのだろうな。彼女がくるときはいつも香水をつけている。臭いくらいで嫌われては悲しいもの……。

●はやく小説を書きたい。書きたいと思うだけでもうれしい。咳こんで苦しかったときは、文学どころではなかった。人は肉体的な苦しみには弱いものだとしみじみ感じた。

●彼女の手をにぎっているうちに、うとうとしてしまった。髪や足を洗うことができたので気分がよかつたのだ。

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