第4話P病床日記1961.8.1-夏


4 P 病床日記/1961.8.1火曜日

●10病棟/530号室

●上都賀病院に入院する。安静度3。絶対安静に近い状態を保っている。急性肋膜らしい。あすになれば、レントゲンの結果が判明するはず。熱7.8。軽いめまい。背筋の痛み。とくに、空せきのでたときが、ひどい。背中の肉が赤くただれているような激痛がはしる。呼吸が困難となる。

●病室は二人。高校生。まずは年配の人でなくてよかった。

●窓から流れ込む街の騒音。子どもたちの健康な笑い声。四角い構図の中、白いシーツの海でぼくは街が夜の底に沈みこむまで眺めていた。

●天井に赤い反映が動く。下の通りを走る車の騒音がする。

●大垣さん。会いたい。美智子さん。会いたい。大垣美智子さん。会いたい。会いたい。会いたい。 

○冒頭のPは過去を表します。日記や記憶をたどって過去をみつめます。

○Nは現在のことを書くブログとなります。

N

○50年も時間を遡って書くことのできるのはGGだけに許された特権ではないでしょうか。

○東京タワーの基礎工事が始まっていました。神宮では来るべき東京オリンピックのために夜間でも突貫工事がつづけられていました。そんな時代から、この記録は、物語ははじまっています。わたしは、青山一丁目の夕日を見ていました。わたしの運命がおおきくねじれだした年です。

○いま、ジャズがかかっている。枯れ葉。いかにも秋の風情にぴったりだ。昨夜は、美智子さんと遅くまでブログを打った。起こすのは、かわいそう。掘りコタツに陣取りPCにむかう。

○あすは、彼女をさそって日光に行こう。

○悔しかも かく知らませば あおによし 国内(くにち)ことごと 見せましものを (万葉集.797)

○わたしたちも、あと何年くらいふたりで手を取りあって歩けるかわからない。わたしは新藤監督のように96歳くらいまでは、いやミケタまでがんばるぞと嘯いているが、運命などだれにもわからない。わが愛する美智子さんと小さな旅にでたい。

○時は秋。枯れ葉をききながらGGはロマンチックになっています。


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