第30章 ── 第2話
俺がいない間、階段探索は手探り状態だったようで、野生の勘というかなんというか当てずっぽうで探していたらしい。
仲間たちには大マップ画面がないんだから仕方ないんだが、マッピング作業くらいはしておくべきではないか……?
そう思いはしたけど、今回俺はサポート要員に徹するつもりなので冒険の進め方の意見具申は控えておこう。
黙ってた方が面白い事に出会えそうな気もするしな。
ま、ポータルの場所さえ抑えておけば帰れなくなることはないだろうから問題にもならん話だが。
迷宮都市レリオンにあるダンジョンは時間ごと構造が変わってしまうのでマッピングは無駄だったのと比べ、世界樹は殆どマップ変化はないらしい。
植物なので多少変わる事もあるんじゃないかな。
探索行におけるマーチング・オーダーは以下の通りです。
前衛はマリスとアモン。
中衛前列にフラウロスとアラクネイア。
中衛後列にはエマ、アナベル
後衛トリシア、ハリス。
最後列に俺って感じ。
エマは一番レベルが低いのでキッチリと守らなければならないので、こうなりました。
何かあったらアナベルが盾になる感じですかね。
さて、世界樹内についてなんだけど、巨木といっても木の中だから、壁とか床とかに年輪が見えたりするのかと思ってたけど、そういう感じではなかった。
普通に石造りのダンジョンみたいな感じですな。
誰かがダンジョン的な体裁に整えたのかもしれない。
太陽光は入ってこないので明かりが必要になりますが、エマと俺がいるので
しばらく探索していると……
当然のようにモンスターとエンゲージ。
左側にある通路から突然敵が出て来ました。
敵は
レベルは六〇ですな。
さすがに世界樹に住み着いているモンスターなだけあって、左側にいた巨人が出会い頭に巨大な棍棒を振り下ろして来た。
「リパルシブ・シールド!」
マリスがスキル名を叫んだ途端、振り下ろされた棍棒が吹き飛ばされる勢いで巨人の方へと戻っていく。
ふむ、敵の攻撃を反発させる効果があるのか。
なかなか面白い。
魔法も反発してくれるんだろうか?
だが、間髪入れず右側の巨人が瞬時に左から右へと棍棒で薙ぎ払い攻撃を仕掛けてくる。
だが、左はマリスの
──ガギン!
アダマンチウム製の
木の中だし世界樹の枝って可能性はあるね。
あそこまで硬い音を立てるとなると何か武具の素材に使えるかもしれんなぁ。
マリスに棍棒を弾かれた巨人にアモンが静かに歩み寄った。
「身体が大きいと私たちのように小さい敵とは戦いづらいでしょうね」
そう言いながらアモンは膝小僧に
「ガァァアァァ!!」
うわー、めっちゃ痛そう……
巨人は堪らず、脚を引きずりながら一歩下がった。
「
アラクネイアが手のひらから粘着性の糸を出して巨人の脚を絡め取った。
巨人は手をグルグル回しつつ大きな音を立てて後ろにすっ転がった。
そしてフラウロスは蜘蛛の糸が絡んだ脚に無詠唱で魔法を唱えた。
「
蜘蛛の糸は火に弱いのは自明の理だが、実のところアラクネイアの出した粘着性の糸は非常に可燃性が高い。
少量の火で炙ってやるだけでボッと火が点いて一瞬で燃え上がる。
「ウゴォオ!?」
あれだけ燃えやすいのに何であっという間に燃え尽きないのかは謎ですが、有効な連携プレイですねぇ……
左側の巨人は仲間が一瞬で火だるまになったのを見て、慌てて逃げ出そうとした。
「ハリス!!」
トリシアの号令にハリスが動いた。
あまりの速さに一瞬消えたように見えたが、電光石火の動きで背中を見せた巨人の後ろに移動しただけだった。
「
逃げ出した巨人はそのまま前につんのめるように倒れていく。
通路の奥の方に巨大な頭が転がっていくのがチラリと見えた。
一撃か……
それもアレって多分だけど斬撃系の基本技だよな?
レベル一〇〇の
トリシアはライフルを構えながら左側の通路の先を警戒。
「ちっ、私の出番が無かったな」
久しぶりにダイアナ・モードのアナベルさんを見た気がする。
「おい、トリシア! 次は私が前衛に出てもいいよな?」
周囲警戒をしてたトリシアが構えを解いて肩を竦めた。
「ケントがいるからって支援を任せすぎるのは駄目だ」
アナベルが唇を尖らせる。
「まあ、俺は構わんよ。
俺が真ん中に入るからアモンは最後尾に移ってくれ」
「承知しました」
トリシアが困ったような顔で「いいのか?」と小さく言う。
「いいよ。
俺も少しくらい仕事しないとな」
「頼んだぜ!」
ダイアナ・モードのアナベルに強かに肩を叩かれた。
結構痛ぇ。
アナベルはまだレベル九九なので、レベル一〇〇に向けて張り切り気味なのは仕方ない。
やはり自分で敵を倒してカンストを迎えたいんじゃないかな。
フラウロスとアラクネイアは、それぞれレベル九三とレベル九六。
この二人も積極的に攻撃をしているし同じ理由だろうね。
「次から私も行くわよ?」
「ああ、頑張ってくれ」
エマも今ではレベル七〇まで来ているし、イルシスに追いつくのも時間の問題だな。
後々イルシスが使徒にするみたいな話をしていたが、使徒が神よりレベルが高くていいもんなんだろうか。
レベルが低くても権能があるからいいのかな?
戦闘は一瞬で終わってしまいましたが、これから皆さんお楽しみの
さすがに人型なので食用にするのは気が引けますが、装備品やら所持品は漁ってもいいよね?
今回の戦利品は、まず巨大な棍棒が二本。
ぶっといロープが二〇メートルくらい。
二人分の巨大な革鎧とブーツ、革のズボン(パンツは履いてなかった)。
ベルトに幾つか革袋が付いていたので回収。
革袋の中にはフソウの大判金貨が二枚。大陸西側の大ぶりの金貨が三八枚。
干し肉の塊が四キロくらい。
銀色の腕輪が三つ。
以上だ。
この戦利品のうち、棍棒二本と腕輪三つは魔法付与が為されていた。
棍棒には打撃力が一〇上昇する効果がついていた。
やはり世界樹素材の棍棒だったよ。
無骨な作りなのに魔法付与されているところを見ると、素材の効果って可能性があるかも。
こんなやっつけ仕事の巨大棍棒に魔法付与するのは仕事としてはどうなんだろうと思うしなぁ……
腕輪の方はこんな感じ。
一つ目は
二つ目は
一〇発分の
一〇発もチャージ可能ってのは前にエマに作ってやった
あれは一発しか充填できないし……
最後のは
六秒毎にHPが一ポイント回復していくという効果がある。
その副作用として、腹が減るのが早くなるようだ。
どのくらいの速度で腹が減るのかは解らないが、燃費が悪くなる分死ににくくなるのは凄いかもしれない。
なかなか良い魔法道具なんだが、何で巨人は使わなかったんだろうか……
やはり大きさの問題かな?
この腕輪を装備するとしても、巨人たちには小さ過ぎたのだろう。
指輪として使えばと思ったが、指輪にするには穴が大きすぎてブカブカになるね。
巨人っていっても
ラノベの世界と違って、この世界の魔法の装備品は勝手に大きさを合わせてくれるような機能はないんだよね。
そんな機能があれば便利なんだが……
そこまで便利を突き詰めてしまうのは人を駄目にしそうな気もするが。
だが、そういう機能を魔法道具に付与するには、どんな魔法効果が必要になるだろうかと考えてしまうのは「ラノベ脳」ってヤツなのかもしれない。
俺も好きなのでかなりの数を読んでますので、相当毒されてるのかもしれませんな。
んで、これら戦利品は仲間たちで有効活用です。
ちょっと鎧の方を改造して、鎧の上からカッチリ嵌まるようにしました。
前に言ったように彼は
なので緊急用の防衛手段として装備してもらいたい。
それぞれの腕輪を渡された仲間たちは嬉しげだ。
本来なら装備は俺が作って万全にしてやるべきなんだけど、装備に望む機能を持たせるには、望む能力を発揮させる為の
全ての
トリシアとシャーリーが昔やってたように、古代遺跡とかを探索して
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