第29章 ── 第26話
神々の介入でモンスターたちも落ちてこなくなったし、アースラが神界に帰っていった後に
それにしても、まだ解除もしていないのに神々は出入り自由だったのはビックリだよ。
何であっても出るのは不可な設定だったのにな。
やはり神は別枠なのか。
あの移動方法は次元転移じゃなければ説明できないんだが、神になると
MP消費なしで使えるならチートも良いところだ。
まあ、あの音と光では隠密性は皆無だけどね。
さて、今後の方針ですが、アースラが相当思い詰めているので、アースラの依頼を最優先にしようかと思います。
まだ冒険の途中だし、俺の好き勝手にするのも何なので、仲間たちの意見も聞いておこうか。
「セリソリアさ~ん」
奥に続く扉の前にいたマリスの母親に俺は声を掛けた。
セリソリアはダッシュで俺の方までやってくる。
そんなに急がなくてもいいのだが……
「何か御用でございましょうか!?」
「え? あ、はい。
ちょっとマリスの部屋で仲間たちと話し合いたいのでもう少し滞在してもいいですか?」
別に出ていってくれと言われているわけでもないんだが、一応お断りしておきたい。
既に一泊させてもらっているので、二泊目は流石に躊躇われるしねぇ。
「自分の家と思ってご自由にして頂いて構いません!」
今回の出来事に神々が介入した事から、セリソリアは俺の正体が間違いなく神々に準ずるモノだと認識できたのだろう。
コレの所為で彼女の対応が物凄い
うーむ。
弱肉強食の世界だから強者に媚びるのは処世術ではあるだろうけど、仲間の身内にこういう対応されると居心地悪くなるね……
「母上、そこまで畏まる必要はないのじゃぞ?
ケントはそういう態度の
普通にじゃ、普通に!」
「その通り、特に美人を前にするとそうなる傾向にあるな」
マリスのフォローにトリシアもウンウンと頷く。
マリスさんはよく見てらっしゃる。
トリシアは変な事を暴露しないでください。その通りですけど。
「そうなんです?
私の時はそんな対応じゃなかった気がするんですけど?」
アナベルさん、それは自分が美人だと言っているようなものですが。
認識していたんですな。
となると天然な行動事態が演技って事になりませんか?
いや、こういう反応すら天然だからという可能性が捨てきれないのがアナベルという存在でもあるな……
「お前ら、俺Sageが過ぎる。確かに美人の前では緊張するけど……」
娘や仲間の反応におろおろしているセリソリアが、俺の仲間への抗議にキョトンとした顔になる。
そしてハリスがその向こうで腹を抱えて吹き出していた。
また、このパターンですか。
ハリスの兄貴には笑いの沸点をもう少し上げておいて頂きたい。
「さて、みんな。
今後の方針について話し合いたい。
マリスの部屋に戻ろう」
俺が歩きだすと、仲間たちが付いてくる。
「あ、セリソリアさん」
俺は思い出したように立ち止まった。
「何でございましょうか!?」
「あー、うん。マリスたちが言ったように、今までと同じ感じの対応でいいんで……
んで、今回の件で
俺は後ろの方で山になってる気絶したモンスターたちを親指で指し示す。
その山の一角はアガリス、ヤヌス、ゲーリアもいる。
「あ、はい! 賜りました!」
やれやれ……先が思いやられる。
「んじゃ、行こう」
俺は仲間たちを促してマリスの部屋に戻る。
マリスの部屋で、また片付けていなかった食事用のテーブルと椅子を囲んで話し合いを開始した。
アースラとの会話を聞いていた仲間たちは、ほぼ全員が現実世界へ御霊分けした俺の分身を送り込む事に反対していた。
「反対するに決まってるじゃない。
もし失敗したら、ケントの命が半分になるって事でしょ?」
魂のエネルギーが半分になるといっても、寿命が縮んだりするんではないと思うが、エマはそういうニュアンスで捉えているのかな?
「いや、不老不死なので死なないし歳も取らないよ」
「そうじゃなくて、存在が希薄になるって事でしょ?」
「ああ、そういう意味か。確かにそうなるな」
俺は頷いて見せる。
するとトリシアが眉間にシワを寄せて手を上げた。
「それは、消えた創造神と同じ事になるんじゃないだろうな?」
鋭いところを突いてくるな。
まさにその通りだ。
自分の存在を分けていけば、いつかはハイヤーヴェルのようになっていくだろう。
権能の移譲とはそういう事なんだと思う。
でも、今回は権能の移譲ではない。
同位体として魂を完全に分けるのだ。
ハイヤーヴェルの創造神としての力が十全に必要なので、権能の移譲という形が取れないのだから仕方ない。
トリシアは「俺の存在が希薄になって力が衰える事は神々、延いてはティエルローゼ全体に掛かる大問題ではないか」と俺の反応を見て付け加える。
まあ、確かにそうなんだが……
いつまでも分霊状態にしておくつもりはないし、片が付いたら再統合するつもりではあるんですがね。
俺がそう言うと「可能なのか?」とトリシアは疑問を口にする。
ハッキリ言えば解らない。
だが、多分できるだろうと俺は思っている。
お守りとか、神社で買い替える時に古いやつを返納するでしょ?
お守りも小規模の御霊分けだと思うので、それを返すという事は元の御霊に戻す事ができる事を示していると思う。
前例があるならできるに違いない。
この楽観的な思考が俺の長所だろうか。
俺は物事を複雑に考えがちなので、ある程度のレベルまで振り切れると楽観視しはじめるのだ。
こうでもしないと、精神的に保たなかったからとも言える。
「さて、チームメンバーは全員反対のようだが、エマはどう思う?」
「私はケントのしたいようにすればいいと思うわ」
お、消極的な賛成?
「貴方たち、ケントの身を案じて反対しているように見えるけど……」
エマが一度切って仲間たちを見回す。
「ケントの力を信じていないって言ってるようなものって自覚ある?」
「なんじゃと!? 我がケントを疑っていると申すか!?」
マリスが憤って立ち上がる。
「だってそうじゃない。
前例がない、ぶっつけ本番だって聞いて反対してるし、ケントの実力を疑っているように感じるわ」
「そ、そんなことは無いのじゃ……」
マリスがシュンとして座り直す。
「私は魔法道具の制作や魔法の開発をするケントを間近で見てきたけど、この人、マジで規格外なのよ。
私たちの尺度で図れるほど小さい人じゃない」
エマはやれやれといった感じで方を竦める。
「本当に普通じゃない。
呪文の構築とか、なんでそうなるの? って聞きたくなるような出来事の連続よ?
それと、英雄神様が工房に良くいらっしゃってたから聞いたのだけど……」
エマは自分の
「これ見て」
ん? この延べ板……前にアースラに魔法の説明をしようと作った魔導回路じゃね?
その魔導回路に何かあったっけ?
トリシアは魔導回路を手に取ると魔力を流した。
「はあ!?」
トリシアが素っ頓狂な声を上げた。
「あり得ない! 何なんだコレは!?」
「ケント。説明」
俺はエマの意図が判らず首を傾げる。
「解ってないの? コレ貴方が作ったんでしょう?」
「ああ、確かにそうだが。
まあ、その板は、反発する属性を同時に魔導回路に組み込めないってアースラがいうもんで、反発属性の同居が可能な事を見せる為に作った魔導回路だよ」
そういうとトリシアは更にポカーンとした。
それを見てハリスがプッと吹き出す。
「いや、反発する属性は一つの術式に織り込むと相殺しあって消滅する。
これは魔導摂理における反発性原理と言われている。
魔法の神が作り上げた法則だ。
何人もこれを覆せないからこその原理なんだが?」
俺はトリシアから魔導回路を取り上げる。
「でも、出来ているんだから仕方がない」
俺は魔力を流し、円環を回る属性の違う魔力の光を皆に見せる。
「くくくく……」
突然、アモンが笑い始めた。
「エマ殿の仰る通り、貴方たちは我らの主様を過小評価なさっておられる」
フラウロスもアモンの言葉に頷く。
「そもそも、我らが主は、創造神、そして破壊神の力を同時に持っていらっしゃる。
法則など壊し放題、作り放題なのです。
この意味がお解りか?」
「その通りですよ。世の法則は主様の思い通り、何においても失敗のしようがありません」
アラクネイアに至っては俺は失敗知らずであると豪語する。
マジで?
そんな人生イージー過ぎない?
こっちに転生するまで、かなりハードな人生だった気がするんですけど?
ティエルローゼに来てから俺は「真の力が覚醒した」とか?
左手に封印されし力とか夢想してたけど、それってマジだったの?
厨二病の妄想が現実になった場合、まず自分自身がその覚醒した力を疑うなんて事、全然想像してなかったよ……
だが、そこまで自分が受け継いだ力が万能だとは思えない。
色々と危険のない範疇で試していかなければならない。
そもそも、俺は受け継いだ創造神の力は使っているが、破壊神的な力を使った自覚が全くない。
話によれば、ヤマタノオロチをぶっとばした力がそれらしいが……
摂理やら原則やらまで破壊する力だとすると相当ヤバい権能だな……
何気に力を使うのが怖くなってきたよ。
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