第28章 ── 第12話
俺は神々の主張について気になる事について質問してみることにした。
「えーと、ちょっと聞きたいんだけど」
俺がそう切り出すと、女神たちは言い争うのを止めてこちらに視線を向けてきた。
ようやく裁定が下ると思ったのか、全員目がキラキラに輝いている。
「全員がファーディヤが女神の生まれ変わりだと思っているという事は、さっき言ってた四人の神々が一〇年以上行方不明という事で間違いないんだよな?」
風の女神ダナは即座に頷いた。
「勿論でございます」
ダナは自信ありげだな。
「女神デュリアはどうかな?」
「気付いたのは五年くらい前かしら。フォルナは幸運の女神だから、フラフラと居場所が定まらないから……」
「そんな曖昧だと女神フォルナの生まれ変わりってのは微妙じゃないか?」
「ですが、織りなす色は隠しようがありません。彼女を織りなす色はフォルナと同じでございますもの」
色ねぇ……
そういや、ファルエンケールの女王も俺を織りなす力が普通の人間じゃないとか似たような事言ってたっけな。
デュリアが言う色ってのは創造神の目で見える魂の色とか力と同じようなものなのかもしれん。
ただ、俺はフォルナって女神の色を見たことがないので、それがファーディヤと同じなのか判断できない。
「女神エウレーナ、君はどうだ?
メティシアの行方が判らなくなったのはいつだい?」
「一年ほど前になります。
新しい魔術が生まれましたので、それを一緒に調べようとメティシアに声をかけようとしました。
見当たらなかったので探しましたところ、地上にてファーディヤを見つけました。
彼女は間違いなく神の力を秘めたる人間。
そんな存在は創造神様の御力でしか作り出すことは出来ませんので、行方のしれないメティシアの力が地上に落ちて人の形を成したモノと判断したのです」
これも相当怪しい話しだな。
神々が言っている以上、ファーディヤには神の力が宿っているのは間違いなさそうだ。
ファーディヤが持つ神の権能は何だろうか?
神ならば何らかの権能を持っているいはずなんだが。
俺はチラリとファーディヤに視線を向ける。
彼女は俺の視線に気付いたようで「何でしょう?」という表情で首を傾げて見せた。
どうみても自覚症状はなさそうだよなぁ……
「最後にテレイア」
「プロセナスは一四年ほど前から神界から姿を消しておりますの」
ふむ。確かにファーディヤも一四歳くらいだな。
「彼女の顔立ちはプロセナスに瓜二つ。間違いなくプロセナスの生まれ変わりですわ」
顔か。他人の空似って言葉もあるから、一概に本人とは言えない気がするんだが……
ただ、年齢が行方不明になった頃と一致するってのは気に留めておく必要があるかもしれない。
「根拠が薄い人もいる気がするけど……四人の言い分は理解した」
俺の言葉に女神たちの声色が一段高くなった。
「まあ。なんと連れないお言葉……そんな事はありません」
「もう少し深く考察して頂けましたら、私の主張が真実だとご理解できるかと存じます」
「創造神様の後継であらせられるのですから、もう少し公正な目を心がけていただかなくては」
「織りなす色を否定することは何人たりともできません。それがお世継ぎ様でございましても」
やれやれ……
この女神たちに嫌われたら後々不味いいことになりそうで凄い怖いんだが……
「取り敢えず主張はお伺いしたので、一旦念話を切らせていただきますね~」
俺はアースラだけ繋げたままにして、女神たちとの念話を切る。
「おい、聞いてたよな?」
「ああ、どこの世界でも女は怒らせると怖い。気をつけることだ」
他人事みたいに……
「この件はお前ら神々が住む神界の問題だろうに。何で地上で割を食うヤツが出てんだよ」
「確かにそうなんだが……神界は長いこと長となる存在が欠如しているんだ。
秩序の神であるラーマが神界を掌握しなかったら、神界で戦争が起きてもおかしくなかったくらいヤバい時期もあったんだ」
おっかねぇな……
神界大戦争とか洒落になんないぞ。
あれだけ人間くさい神様が揃ってるんだし、諍いに発展することもあるだろうけど、下界に迷惑が掛からないようにしてくれよな。
「で、アースラも彼女らが言ってた神々を見てない?」
「そうだな。そう言われれば、最近は見た記憶がないな」
ふむ。当事者以外の者も見てないとすると確かに行方不明のようだ。
「解った。参考になったよ。ありがとう」
「で、大丈夫そうか?
何気に相当な力を持つ女神ばかりだから対処を間違うと後々面倒だぞ?」
「間違うも何も、俺は関係ねぇんだけどなぁ。とんだとばっちりだよ……」
「お前も創造神の後継者なんだし、降りかかる火の粉は自分で払えるようにしておかんとな」
気をつけようにも厄災が向こうから突っ込んできた感じなんだが……
火の粉なんて可愛い類のモノでもない。マジで大災害だよ!
「それじゃ、俺はこの後用事があるから切るぞ」
「ああ、今回は仲介ありがとう。助かったよ。
彼女たちとはもう繋げられたから、次は大丈夫だと思う」
「ま、何かあったら連絡してくれ。出来る限り力になる」
「その時は頼む。それじゃ」
アースラとの念話を切る。
さて、どうしたものか。
俺が透明人間とでも話しているように見えたのか、ファーディヤは気味悪そうに俺を見ている。
「ああ、今のは念話ね。
遠くに離れていても話ができるスキルなんだよ」
「そんな便利なスキルがあるんですか?」
「あるんじゃよ。我も便利だから覚えたいのじゃが、中々上手く行かぬ」
マリスも念話スキル欲しいのか。
でも俺のは「念話:神界」っつー、後ろに変な付属物が付いてるヤツだから手に入れるのは難しい気がする。神になれば手に入るんじゃないかなぁ
「ファーディヤ。聞きたい事があるんだが」
「何でしょうか……」
「神界の神々に言わせると、君は神の生まれ変わりなんだそうだけど……」
「わ、私がですか!?」
さすがに突然そんな事を言われても納得はできないわな。
「神々が言うにはだけど、そんな自覚ある?」
「私が神だったら、こんな人生歩んでません!」
確かにな。
聞いた限り、彼女の人生は不幸続きで神っぽい超常的な奇跡とかは一切ない。
どっちかというと、その頻発する不幸が神の呪いにしか見えない所業だったりする。
神々の対立ぶりをみると加護が反発しあって不幸が舞い込んでいるようにも思えるが、神によれば加護がぶつかり合うような事はないと言う。
しかし現実にはファーディヤの不幸は普通のレベルを超えている。
マジで理解不能の現象が起きている。
俺は仲間たちにも神々の主張を開示して意見を聞いてみる。
「神界の神々にも困ったものだな」
「トリシアの言うとおりじゃな。
ケントの手を煩わせるとは不届きもほどがあるのじゃ!」
「でも神々のなさることですから……時々理不尽に思える出来事もありますが……」
トリシアとマリスは素直に腹を立てているけど、アナベルは
アナベルの生まれ故郷の帝国なんかも女好きの神様の被害にあってましたもんねぇ。
「私どもにもう少し力があれば、主様に仇なす神界の神々など滅ぼしてくれますのに」
「コラクス。それができればカリス様が滅ぼされるような事はありませんでしたよ」
「その通りですな。しかし、コラクス殿の言い分も我は理解できまするぞ」
魔族三人衆も神々のとばっちりにご立腹のようです。
ふと見るとハリスが片眉を挙げて俺を見ている。
「ん? 何?」
「ケント……忘れているようだが……
お前の……マップ機能とやらで……見つけられないのか……神々を……」
なんと……ハリスさん……そんな解決方法を思いつくなんて!
さすがイケメン!
いや、イケメンは関係ないが、さすがハリスの兄貴は冴えてますな!
「そいつは思いつかなかったな」
俺がニヤリと笑うとハリスもニヤリと笑う。
「よし! やってみるか!」
俺は大マップ画面を呼び出し、検索用のダイアログを表示させる。
早速、文字列を入力して検索してみた。
ポスッと一本ピンがマップに落ちた。
場所はここから二〇〇キロほど離れているアゼルバードの町の一つだ。
間違ってもファーディヤのいるココではない。
「ピンが一本立った……場所はここから北東の海に面した町だな……」
「マジかや?」
マリスが面白げに笑う。
「ああ、大マジだ。
どうやら、行方不明の神の一柱はアゼルバードにいるようだ」
「どの神だ?」
トリシアも興味深げだ。
「ブリギーデだな。踊りと歌の神が町で何やってんだかねぇ?」
「早速捕まえに行きますか」
アモンもご立腹なので物騒な言い回しですよ。
「まあ、捕まえるのはともかく、二〇〇キロも離れてるし、続きは明日からの事にしようぜ」
「肉体は疲れてませんが、精神が疲れた気がしますので賛成なのですよ。
お肌に悪いのでしっかり休みましょう!」
空は既に夜の帳が降り、砂漠だけあって雲一つないので星が非常によく見える。
満天の星空とはよく言ったものだ。
だが、星をどう結んでも俺の知る星座にはならない。
冬も近いのでオリオン座とか見たかったんだけどな。
ちなみに、現実世界ではベテルギウスはまだ健在だ。
少なくとも俺が転生する前には爆発してなかった。
一〇〇年以上前から爆発すると言われている割に頑張るよね。
ま、星とかの寿命は人間の尺度で測れるもんじゃないって事ですかな。
あっちの世界で生きているうちに歴史的な天文ショーを見たかったが、人生うまく行かないもんですよ。
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