第14章 ── 第22話
翌日から俺は工房に入る。ゴーレム造りをするためだ。
最初に手がけるのは建築用作業ゴーレムだ。重機級の巨大なものを数体、中位のものを一〇体ほど作る予定だ。
まず、ベースとなる一体を作れば、あとは生産ラインで自動で作れるので俺の手間はそれほどではない。
重機ゴーレムにはブルドーザーやパワーショベル、クレーンといった機能をオプション装備で実現する。
デカイので、まるで某有名ロボット・アニメの機体のような感じになってしまった。ターン・ピック付けるか?
続いて中くらいの大きさのゴーレムだが、これにはタンパーレッグ、石材・木材加工用アーム、運搬ラックなど、汎用性をもたせた。人間サイズに詰め込むには苦労したが何とかなった。
ほぼ半日でこれらの設計と作成が完了したので自動生産ラインに数量を打ち込んで造らせる。
設計図などはデータベースに登録しておく。こうしておけば後々増産できるからね。
「さてと、最終工程かな」
食事と休憩をとった後に、俺はエマを連れて出来上がったゴーレムたちの前にやってくる。
「よし、エマ。ゴーレムに命を吹き込むとしよう」
「いつでも良いわよ」
俺は
通常の
各種
「ふー」
重機ゴーレムの一体が終わり深呼吸をする。すると、エマが仕切りに首を傾げていた。
「どうした?」
「おかしいのよ。魔力がケントに流れていかないわ」
「え? でも魔法は全部掛け終わったよ?」
「おかしいわ」
俺は自分のステータスを見るが、MPが全く減っていない。
「おかしいね。MPが減ってない」
「でしょ? 何故かしら?」
俺は詳しくステータスやスキルを調べていくが、その原因が解らない。
「うーん」
エマがポンと手を叩いた。
「ちょっと、貴方の称号見せてよ」
「ん? 称号?」
俺は言われた通り、称号一覧を見る。
ドーンヴァースで手に入れた称号とティエルローゼに来てからの称号が並んでいるが、その中にこんなものが表示されている。
『マリオンの加護を受けし者』
『イルシスの加護を受けし者』
「やっぱりねー」
エマが納得顔になる。
マジか。いつイルシスの加護まで受けたんだ?
「気づかなかった……」
「これで、ケントもイルシスの
「いや、神の
まあ、MP無限というチート能力は悪くないから良いけど、一言断りなさいよ。
しかし、二柱の神の加護を受けても問題無いのかね? 干渉し合ったり、打ち消し合ったりしないの? 良くわからないが、後で念話してみるか。
「ということは私は必要ないかしら」
「すまん。ゴーレム作る時は大丈夫そう」
エマが少々寂しそうな顔になるが、そんな雰囲気はすぐに消えてしまう。
「じゃ、研究もあるし、私は研究室に戻るわ」
「うん、ありがとね」
エマが戻っていき、俺は魔法の付与作業に戻る。
ま、俺が加護持ちになったとしても、エマが不必要ってわけじゃないしな。この工房運営は俺がいなくても、エマが回してくれるという安心感が必要だ。
俺は、きっと留守がちの領主になるからねぇ。今まで以上に。
俺はどんどんとゴーレムに命を吹き込む。
完成したゴーレムは俺の邪魔にならないように勝手に倉庫区画へと移動していく。便利だよねぇ、ゴーレム。
建築系の作業ゴーレムが全部完成したのは、午後二時といった所だ。
俺は彼らをインベントリ・バッグに詰めて、トリエンの地上へと戻る。
スレイプニルを取り出して乗り込むと西門の外へと向かった。
西の街道周辺は広大な平地で、ほとんど何にもない。この街道の南側部分をトリエン軍の駐屯地としたい。
少々の起伏があるが、これは重機で
訓練場やゴーレム駐機場、兵士宿舎や司令部などを建設予定だ。
建築用の石材や木材などは、以前クリスに指示を出しておいたので、役場が持つ倉庫に山積みだったからインベントリ・バッグ内に仕舞っておいた。
それらが失くなっていてクリスが慌てて俺に報告に来たことがあったが、俺がそういうと、そういう事はちゃんと報告してくれと頭ごなしに怒られました。ごもっともなので、それ以降はちゃんと書類を提出するようにしている。
ゴーレムと資材をどんどんと取り出していく。
重機ゴーレムに駐屯地予定のスペースを
「了解、マスター」
駐屯地の設計図は工房データベース内に登録済みなので、その設計図に従って三台の重機ゴーレムがドシンドシンと平地の整地に走っていった。
その様子を見ていた通りすがりの隊商が唖然とした顔をして眺めていた。
ゴーレムは珍しいから仕方ないね。
建築資材などを置き終えた俺は、中型の作業ゴーレムにも指示を出して、トリエンに戻る。
これで駐屯地の各建物などは、ほぼ自動で完成するだろう。
次は軍隊用のゴーレム兵ですよ。
隊長たちが待ちくたびれてしまう前に
工房で基本となる戦闘用ゴーレム兵の設計図を起こしていると、マストールがやってきた。
「ゴーレムを造り始めたそうじゃな」
「ああ、これから戦闘用のを作るよ。図面はこんな感じだけど」
俺は書いているゴーレムの設計図をマストールに見せる。
「あまり見ない型じゃな。普通ゴーレムといったら、入り口のあんな感じじゃろ。ずんぐり巨大で」
「ま、これは俺の趣味が入ってるからね。これ格好良くない?」
「なんじゃか騎士のような出で立ちじゃな」
「これが基本の歩兵だね。剣と盾、槍を持たせるよ」
「素手で殴るだけで十分な戦闘力じゃろ?」
「そこはロマンだな」
「ロマンだかノロマだかしらんが酔狂な事じゃな」
いいんだよ、これで。俺の軍隊なんだし。
実際、これが出来て動き出したら判ると思うが、この威容は敵対するものに精神的な効果がある気がするんだ。銀の騎士が向かってくる様を想像したら普通逃げ出すと思うよ。
設計図も完成したので、本体造りを開始。
某有名ロボットアニメのような趣味丸出しのゴーレムが完成したのは夕方近くになってからだ。
「ふむ。随分と立派な仕上がりじゃ。ワシはどこをいじればいいのやら」
「マストールも造りたいの作ってよ。付与は俺がするからさ」
「ふむ。それじゃメシの後に取り掛かるとするかのう」
「俺は、これを上に持っていくよ。今日の作業はこれで上がるとする」
「そうか。ゆっくり休め」
俺は出来上がったゴーレムを連れて、工房の入り口の転送装置で館に上がった。
そのまま西門の外に町中を歩いていく。
騎士のようなゴーレムと歩く俺を見た街の者たちが驚いたり感心したりしていた。
西門の衛兵たちも驚いていたが、このゴーレムが味方なのだと知り、嬉しそうな顔になる。
「これほど立派なゴーレムの騎士が守るトリエンは世界で最も安全な領地となりましょう」
「多分ね。明日からもっと造る予定だし、ここをどんどん通ると思うけどよろしくね」
「了解しました、領主閣下!」
駐屯地にくると、予定地はしっかり整地され、削られて弱くなった部分は中型作業ゴーレムが、タンパーレッグで踏み固めていた。
隅の方に屋根付きのゴーレム駐機場が一棟、ほぼ完成していたので、ゴーレム兵をそこに連れて行って待機させた。
駐機場は屋根だけで、壁はないので簡単に作れる。ここにズラリとゴーレムが並ぶのを想像すると、ワクワクが止まらなくなるな。
その日は館に戻ってゆっくりと過ごした。
アナベルが神殿から帰ってきて、色々と報告をしてくる。
「今日は参拝者が一〇人も来たのです!」
「ほう。以前は全くいなかったのに凄いな」
「そうなのです! このままどんどん信者が増えますのですよ!」
嬉しげなアナベルを見ていたトリシアが口を挟んできた。
「そいつら全員男じゃないのか?」
「よく解りますね~。見にいらっしゃったのです?」
「いや、想像通りだからさ」
「ほえ?」
トリシアが苦笑している。
「そいつらはマリオンへの信仰心で来てないな。アナベル、お前目当てさ」
「どういう事か判りませんのです」
あー、そういう事? アナベルの巨乳見たさか! おっぱい星人の俺もその心理は良く理解出来ます。眼福ですからなぁ……
「ま、そのうち不埒な事をしてくるヤツが出るかもしれない。その時は一発入れてやれ」
トリシアがソファに座ったまま片足を振り上げる。
それを見た俺とハリスが、内股になって股間を手で押さえた。
「それ、マジ、勘弁」
「お……恐ろしい……」
俺とハリスの表情を見たトリシアが吹き出した。
ソファで寝ていたマリスが突然起き上がる。
「……テンプリ!?」
周囲を寝ぼけ
どんな夢を見ているのか。楽しそうな夢っぽいから良いか。
こうして平和な夜が更けていく。明日も忙しくなるぞ。
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