第11章 ── 第10話

 服の包みを持ってトリシアたちの部屋の扉をノックする。


「入っていいぞ」


 トリシアの声が聞こえたのでドアを開けて部屋に入る。

 扉を閉めて部屋を見ると、ほぼ半裸姿の四人が目に飛び込んできた。一応タオルで隠されているが、お尻の丸みとか丸見えなんですけど。


「なんで半裸なんだよ」


 俺がやれやれといった感じに応えると、トリシアが胸を張る。


「硬いこと言うなよ」


 ニヤリとトリシアが笑う。いや、それ普通、こういうシチュを狙って部屋に侵入するスケベ男のセリフだよな。


「あらら。ケントさんはエッチですね」


 のほほんとした感じのアナベルの豊満な胸の膨らみがタオル越しに見えてエロエロでした。脳内アナベル画像フォルダに新たな一枚が保存された。


「そうじゃぞ。ケント。男は見れるときにシッカリ見ておくべきじゃぞ」


 お前は前を隠せ。半裸どころかスッポンポンじゃんか。前にも見たけどペッタンコだからな。俺の趣味的には欲情せんぞ? アナベルくらいになってからやってほしいものです。


 ミネルバといえば、顔を赤くして物陰に飛び込んでしまっている。うん。これが年頃の女の子の反応ってもんだろ。だけど、年頃なのにペッタンコだね。栄養事情が悪いせいかな。


「で、どうしたんだ? 我々の風呂上がりの悩殺姿を見に来たわけじゃあるまい?」

「ああ、そうだった。ミネルバに服とかを買って来たんだけど」


 俺は包みをベッドの上に置く。


「とりあえず服と下着だ。あと靴だな」

「あらあら、ミネルバちゃんのですの?」


 アナベルが際どい姿で包みを開いている。爆乳が重力にあらがうのでプルプルとタオルの中で揺れている。ビデオカメラが欲しいです。


 その様子を興味深げにミネルバが見ているが、自分の格好が恥ずかしいのか物陰からは顔だけしか出ていない。


「おおー。こういうのは我も持っていないのじゃ。ケントの趣味か? 我もこういう格好した方が良いか?」


 マリスが服を確認して俺に問いかける。


「んー。マリスには少々大人っぽいかな。マリスはもっとフリフリしたのが良いかもね」

「なんだ。じゃあ私もこういう格好するか」


 トリシアが腕を組み状態で思案している。


「いや、トリシアは上背があるからな。カッコイイ系で攻めると婦女子がメロメロだぞ?」


 晩餐会とかで女性から黄色い声を向けられていたトリシアを思い出す。間違いなくヅカジェンヌだったからね。


「うーむ。私はどちらかというとケントがグッとくるヤツがいいんだが……」

「俺がグッとくる? トリシアは少し胸のボリュームが足んないからなぁ……」


 トリシアが自分の胸を下からユサユサと確認しつつ言う。


「ボリュームというのがワカランが、多分失礼なことを言っているのは理解した。これでもエルフじゃ大きいほうなんだがな」


 確かに。マルレニシアとかも殆ど膨らんでなかったからなぁ。ティエルローゼでは巨乳エルフってものは幻想の産物以外に居ないに違いないよ。


「エルフはその代わり美形が多いからな。釣り合いが取れるんじゃね?」

「ほう。私は美形か?」

「女王ほどじゃないと思うけど、相当な美形だろ」


 トリシアが得意げに胸を反らせる。


「我は!? 我はどうなのじゃ!?」

「マリスは可愛らしいな」


 マリスもトリシアの横でエッヘンポーズになる。


「あらあら。私はどうなのでしょう?」


 アナベルもそこ気になるの?


「アナベルさんは……ダイナマイトバディ。それだけで鼻血なのでオールオッケー」


 俺は指をオッケーの形にして微笑む。


「言葉の意味は解りませんが、ケントさん好みってのは分かりましたのです」


 トリシアとマリスの横でアナベルも胸を張った。デカイなー。ちょっとつついてみたい衝動に駆られるが耐えておく。


「それじゃ、みんな。後はよろしく」


 俺は早々に彼女らの部屋から退散する。アナベルのせいですでに股間の紳士が危険領域に入ってしまいそうだからね。



 次の日になり、俺の買ってきた服や靴に身を包んだミネルバとトリシア、マリス、アナベルが食堂に来た。


 うん。見立てどーり。


「どうだ、ケント。見違えただろうが」


 トリシアが自慢げだ。よく見れば、ザンバラに短く切られていた髪もしっかり可愛らしく切り揃えられて、何処から見ても可愛い女の子だ。臙脂色えんじいろの生地が派手っぽい気もするが、他のパーツがその派手さを抑えているので比較的上品に見える。ツーピースの服だから他の二着で組み合わせを自由にできるし、オシャレしたい年頃のミネルバにはいいだろう。


「バッチリだね」


 俺は親指を立ててトリシアを称賛しておく。

 ミネルバは顔を赤くしていてモジモジしている。


「こ、こんな高価なモノを頂いてしまっては……」

「遠慮するな。それは俺のお詫びの気持ちなんだよ」

「お詫び……? 私は辺境伯さまにお詫びされるような記憶がないのですが……」


 俺は一応ミネルバに白状しておくことにした。


「実はさ。初めて君に会った時、男の子だと勘違いしたからね。ずっと謝りたいと思っていたんだ」

「え? そんな事で?」


 ミネルバがビックリする。


「だって、ミネルバは今、お年頃だろうし、そんな女の子に失礼極まりないよね」

「そうじゃな。ケントはもうちょっと我も女の子として扱うべきじゃな。我もお年頃じゃからの!」


 マリスが不満げです。君は、お年頃というにはあと数年足りないと思いますよ、マリスさん。


「うむうむ。ケントは女心をもう少し解るべきだな」


 トリシアまでウンウンと頷く始末です。

 俺の後ろにいるハリスから、彼女らが言葉を発する度に、「プッ」とか「ブホ」とか言う音が聞こえているのが気になって仕方ない。


「ケントさんは、鈍感なのですね。罪作りなのです」


 アナベル、それはどうだろうか? トリシアたちは漫才風味だからね。真面目に受け取ると怖いですよ、きっと。


「さてと。ミネルバ。君は今日、村に発つつもりだろ?」

「そのつもりですが」

「そこなんだが……一人で帰るのは危険だからオススメしない」


 俺はミネルバに苦言を呈す。


「では、どうすれば……」

「冒険者ギルドに行こう。帰りは冒険者に護衛してもらう。今回は俺との契約書も売上金もあるからね。用心に越したことはないよ」


 今後の事もあるからね。冒険者ギルドには挨拶しておくべきだろう。もちろん、俺達も帝国の冒険者ギルドには行ったことがない。ならば俺達も挨拶必要だよね。


「ということで、冒険者ギルドにいくよ。みんなも一緒にいくだろ? 王国の冒険者として挨拶しておこうぜ」


 俺がそう言うと、みんなが頷く。


「そうだな。私も帝国のは初めてだ」

「我もじゃな。こんな南までは来たことないからの」

「うむ……了解だ……」


 よし、みんなの同意も得られた。


「私も行くのですよ。ケントさんたちと行動を共にするのがマリオン様から与えられた使命ですから」


 どうやらアナベルも付いて来るようだ。ヒラヒラとカードをちらつかせている。む。お前さんも冒険者カードもってるんかい! 色としてはシルバーのようだ。マリスと一緒だ。結構高ランクじゃないか。


 よし。それじゃ、あとは冒険者ギルドの場所だが……


 大マップ画面で冒険者ギルドを検索すると、宿からちょっと歩いたところにピンが立った。場所も検索できるのは便利だなぁ。試してみてよかった。


「冒険者ギルドはこの近くだ。それじゃ、みんな行こうか」

「了解じゃ!」

「承知……」

「うむ。参ろう」

「はーい」


 歩き出した俺たちの後ろをミネルバは少々不安げな面持ちで付いて来る。

 そんなに心配ないと思うよ。帝国のギルドも王国とそれほど変わらないってデニッセルも言ってたからね。前にギルドで聞いた限りだと、各国のギルド同士は協力関係にあるようだし。


 大マップを参照しつつ通りを進む。宿屋がある通りは商店街っぽい通りだが、一つ角を曲がって商店街っぽい感じから雰囲気が少し変わる。少々、怪しい感じの人が増えてきた気がするね。それと怪しい感じの人に混じって冒険者風の人たちも増えてきたな。治安が良いとは言えないアドリアーナだから、こういった場所に冒険者ギルドを置いているのかもしれないね。


 商店街の通りを曲がって五分ほど歩いて、『帝国冒険者組合館アドリアーナ西支部』なる看板を掲げる建物が見つかった。


 俺が先陣を切って中に入る。

 アドリアーナの冒険者ギルドは比較的小さい。それもそのはずで、アドリアーナには冒険者ギルドの支部が四つもあり、東西南北にそれぞれ組合支部があるようだ。だから、ここは「西支部」なんだね。


 入って左手に受付、右側の壁には扉がいくつも並んでいる。個室のようだが。正面の壁一面が依頼を張り出す掲示板のようだ。 掲示板と入り口の間には丸テーブルがいくつも置いてあり、冒険者たちが談笑していたり、次の依頼の計画を立てていたりしている。

 俺は受付へと足を運び、受付嬢にニコやかに話しかける。


 第一印象は重要だからね。

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