第2話 真冬の月

「う~寒い」

 天は白い息を吐いた。

 日本首都トーキョー。ビル群の1つの屋上。ユーリの手によってカスタマイズされた川崎ZR1300に京と跨がっていた。耳にはインカム。

 普段着けているピアスを外し、真冬の空の下二人はスタンバっていた。

 バイクを操るのは天、タンデムに銃を持つ京。

 インカムから、

「俺達、貧乏くじ引いてる気がするのは何故だろう」

「そりゃ、あの二人が絡んでいるからだろう」

 二人は、海堂が訪れた日を思い出す。


『君達は狩人だ』

 そうもらした海堂に寡黙な京が、狩人?と訝しげにつぶやいた。

『京、君の射撃の腕を買いたい』

 海堂はさらりと言う。

 京は武道の他にクレー射撃をならってた。腕前は95%。それに目をつけた。あと、二人がではないこと。普段はピアスで押さえているが、天はテレポート、京は接触テレパス以外は未知の力を持っていた。一度悪夢から部屋を爆発させたことがある。

 海堂は、

『今回、目処めどを付けた金融機関は4ヶ所。君達は未成年だから、1番確率が低い処に就いてもらう』

 立体地図が現れる。4ヶ所点がついついた。

『君達はここ新橋を見てもらうことになる』

『もし、出くわしたら?』

 天は遠慮なく聞いた。

『その時は、躊躇ためらわず、撃って捕獲してほしい。射殺は厳禁だ』

『難しい注文を出すね』

 京は顔をしかめ、

それまで黙っていた桐吾が口を開いた。

『契約は成立している。もう、計画は始まっている。お前たちに拒否権はない』

 桐吾は表情を変えずに告げる。

『応援は在るんですか?』

『警察は,外の三件で手一杯だ。二人だけでやってもらう』

 さらりと言ったら、京が

『命がいくつあっても足りませんね』

 皮肉げに言う。

 そんな言葉も聞こえない振りをして桐吾は告げる

『作戦開始だ』


 銀行強盗は必ず満月の午前2時に現れた。天は腕時計を見る。3分まえだった。

 二人の頭に響くもの

(当たりくじを引いた)

 今はもう揺るぎない物に変わってる。京はインカムを切り、プロテクターに変える。ここからは心話になる。

 果たしてーー

 金属音と共に白銀の狼が現れた。

 京が銃を構え狙いを絞る。

 途端に、狼は大きく跳躍すると、ビルの谷間を抜けていく。

 天はアクセルターンし、ビルの屋上を跳躍していく。

 タンデムに縛りつけられた京が、指示を出す。

 狼は身軽にビルを飛び越える。

 京は射程距離を保ったまま、天に全開をうながす。

 (直進300メートル左へターン)

 京はそう促すと、銃を構える。射程距離ギリギリ、ターンと同時に引き金を引く。

 ズガァーン

 とビルの谷間にこだまが響き渡り、ギャンと鳴く悲鳴があがった。

「クリーンヒット!」

 天は叫んだ。狼がビルの谷間に落ちるのを確認した。

 天はバイクをビルの合間を渡り継ぎ、狼の落下地点まで来て、ビルから降りた。ヘルメットを取り辺りを見回す、

「確かこの辺だったよな、京」

 だが、京からは返事がない。呆然としている。目の焦点が合ってない。天は京の肩を揺さぶった。

 京がハッとして

「ああ、ごめん」

 探さなきゃな、と京は精神を統一する。1本向かいのビルの向こうに気配がする。二人はバイクで向かい、路に倒れているものを見た。

「!」

 そこには狼ではなく、銀髪の少女が全裸で横たわっていた。

 京は腰丈まである銀髪をかき分け腹部の銃痕を確認する。

「・・・彼女で正解らしいけど・・・」

 自分が撃ったのは狼だった。でも、倒れてる彼女は? 疑問に持ちながらジャケットを脱いで少女にかける。

「天、お前も脱げ」

 振り返って言うと、天は後を向いて頭を下に向けてる。

 訝しげに京が天に近寄ると、天は

「鼻血出た・・・」

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