7.




翌日からは、昼休みと放課後に勉強を教えてもらうことになった。


昼休みは教室で、放課後は生徒会室。


根渕くんが生徒会室にいることもしばしば。


でも、会長のおかげでこの前ほど根渕くんを怖いとは思わなくなった。



「これで理系科目のテスト範囲は一通り終わりだね」



ある日の昼休み。


終わったー!!と私は体を伸ばした。



「まだテストは始まってすらいないわよ」



隣で勉強しながら藍花が呟く。


そんな絶望的なツッコミいりません。


テスト勉強を一通り終えたって事実が素晴らしいんだ。



「じゃあ、昼休みはこれで勉強辞めようか。放課後はどうする?もう一周する?」


「んー、会長に教えてもらわなかった教科の勉強する。わからないところ教えて?」


「そうだね、そうしようか」



勉強道具を片付けながら、そんな話をする。


こんなに勉強することないけど、会長のおかげで苦痛じゃない。


問題解けたら褒めてくれるし。


成績上がるといいなぁ。



「……あれ」



会長と雑談していると、藍花は急に顔を上げた。



「どうしたの、藍花?わからない問題でもあった?」


「ないわよ。李眞、今日金曜だけど休みなの?」


「……あ」



完全に忘れてた。



「休みって、何かあるの?」


「いや……、ちょっと抜けられない大事な用事がありまして……。先週風邪で休んでるから特に抜けられなくて……」



せっかく勉強を教えてくれるのに、申し訳なくて続きを言いにくい。


でも、会長は察して、「じゃあ今日の放課後はお休みだね」と言った。



「ごめんね、会長」


「全然大丈夫。明日明後日は勉強する?」


「したいけど、2日間とも13時まで用事で、14時ぐらいからしか勉強できなくて……」


「そっか。14時から勉強しようか」


「いいの!?ありがとう、会長!!」



そう言うと、会長はにっこりと笑った。



「休日に手幡さんと会えるなんて嬉しいことないからね」



あはは、この人デートとか思ってるんじゃなかろうか。



「14時に手幡さんの家に行こうか?」


「ううん、大丈夫。駅に来てくれたらいいよ。駅の近くで用事だから」


「じゃあ、14時に駅の改札前にいるね」



うん、と頷いたのと同時に、昼休み終了5分前のチャイムが鳴る。



「もうこんな時間なんだ。手幡さん、また明日ね」



教室から出ていく会長に手を振り、私も授業の準備を始める。


藍花も勉強道具を片付けながら、席から立ち上がった。



「会長にまだ言ってないのね」


「うん。別に言う必要もないかなって」


「知った時、会長、なんて言うかしらね」


「心配するだろうね。家の事情だから、仕方ないってことで流してくれないかな……。悪いことしてるわけじゃないんだし」



学校からの許可もあるんだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る