4.




放課後、生徒会室に行くと、既に会長はいた。


それと、副会長も。


生徒会室のドアを開け、顔を覗かせただけで、副会長は睨んできた。


会長の黒い笑顔と同じぐらい、副会長の眼力も恐ろしい。



「生徒会室の私的利用は禁止されているんだが」


「そう堅いこと言わないでよ、耀毅。勉強するだけだから」



笑って言う会長に、副会長は眉間に皺を寄せたまま「当たり前だ」と言う。



「……副会長ごめんなさい。入ってもいいですか?」


「どうせ、蹴間に言われて来たんだろ。さっさと入れ、ドアを開けたままにするな」



優しいのか優しくないのか。


言われた通り、生徒会室に入ってドアを閉める。


副会長は私が入ってきた時に睨んだ以外、1度も私を見ずに仕事を続けている。



「それと、副会長と呼ばれるのは嫌いだ」


「あ、ごめんなさい……。根渕ネブチくん」


「……へぇ、耀毅の名前は知ってるんだ」



黒く笑う会長。


まだ引きずってるの!?



「きょ、去年同じクラスだったから……」


「その去年、手幡さんに会うためによく耀毅を教室まで訪ねてたんだけどね。去年は割と皆も俺の名前呼んでくれてたんだけど、知らなかった?」



そうなのか。


それは知らなかった。


というかそもそも。



「教室に会長が来てたことも知らなかったです……」



会長の存在を認識し始めたのは、この前の生徒会選挙だ。


去年、生徒会室に用があって行った時も、会長のことをただの生徒会役員としか認識していなかった。


唖然としていた私を見て、会長はため息を吐いた。



「本当に手幡さんって俺のこと興味ないよね」


「ごめんなさい……」


「そこは否定してくれないかな?謝るぐらいなら、そろそろ俺の彼女になることも考えてほしいんだけど」


「いや、だからちゃんと考えてお断りしたじゃん……」



ダメだ、今日の昼の一件から会長の機嫌すこぶる悪い。


これも全て私が悪いのですが!


もうそろそろ機嫌直してくれてもいいじゃん。



「おい、雑談はいいから勉強しろ」



根渕くんはそう言って、なぜか私を睨む。


……私、嫌われてる?


嫌われるようなことしたつもりないのに。


まともに関わったのも、今日が初めてなのに。


根渕くん、何考えてるのかわからないし怖い。



「悪かったから手幡さん睨むな」


「元からこういう目付きだってこの間も言っただろ。勉強しないんだったら出ていけ。目障りだ」



やっぱり怖い。



「ごめんなさい。会長、勉強教えてください」



そう言って教えを乞うと、会長は「耀毅も困ったもんだね」と呟いて勉強を始めた。


主に教えてもらうのは理系教科。


国語と英語は得意だから。


暗記系の社会科目も1人で何とかなる。


会長ほどではないけど。


やっぱり学年トップの成績を取るだけある。


会長、すごく教えるのも上手い。


わからなかったら辛抱強く教えてくれるし。


それに、すごく器用だ。



「蹴間、ちょっといいか」



私が数学の問題を解いてる時に、よく根渕くんは会長に話しかける。


生徒会の仕事だ。


会長は私の勉強を見ながら、仕事もしている。


本当に完璧超人なんだなぁ。


逆に完璧すぎて怖いけど。


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