3.
急に固まった私に、会長はどうしたの?と心配してくる。
「な、なんでもない……!」
会長と目を合わせられず、挙動不審になる。
自分でもわかるぐらい、動揺してた。
会長は何かを察したのか、表情が次第に笑顔になっていく。
それと同時に顔から血の気がなくなる私。
「てーばたさん。まさか俺の名前わからないとか言わないよね?」
「そそそそ、そんなことないよ?」
「へぇ」
会長の笑顔がいつになく黒い。
こ、殺される……。
尋常ではない量の冷や汗が止まらない。
「じゃあ、今俺の名前呼んで?」
「えっと……」
隣にいる藍花を見て、助けてと目線でアピールする。
しかし藍花は知らん顔。
くっそ、藍花は知ってるのか……。
知らないの私だけじゃないと思ってた。
「知ってるから呼べるよね?呼べなかったら、苗字呼びも許さないよ」
怒ってる怒ってる怖い怖い怖い怖い。
会長の名前、誰か1人ぐらい呼んでるでしょ!?
……稔も藍花も、仲良い子たちも皆、会長って呼んでるじゃん。
会長と仲のいい副会長は!?
……去年クラス一緒だったけど、喋ったことないですね。
こうなったら最後の手段!!!
「ど、ド忘れしたみたい!」
「これ以上嘘つくんだったら、付き合ってるってことにするよ」
「……ごめんなさい」
ようやく折れた私に、会長は呆れた重いため息を吐いた。
「手幡さんじゃなければ土下座させてたよ」
「さ、サディスト……」
「襲われたいの?」
「ごめんなさい」
いつものノリも通じないぐらい機嫌が悪い。
そりゃそうだ、私の自業自得だ。
「……こんなにアピールしてるのに、名前も知らないぐらい俺に興味ないのか」
小声で呟いて、また重いため息を吐いた。
「俺の名前は、
蹴間史彦。
そうだ、生徒会選挙の時にちょっと珍しい苗字だなぁって思ってたんだ。
……すぐに忘れたけど。
「あ、手幡李眞です」
「誰かさんじゃないから知ってます」
うぅ……。
しばらくはこれで弄られそう。
「まぁその誰かさんのおかげで、手幡さんから名前で呼んでもらえることになったからいいってことにするよ」
「……まだ成績上がるって決まったわけじゃないし」
「俺に教えてもらうんだから、上がらないと襲う」
ナルシストかサディスト、どちらかにしてください。
「ちょうど1週間前だし、今日の放課後から勉強しようか。場所は生徒会室で」
スパルタで行くよ、と黒い笑顔の会長。
他人事のように、藍花が「頑張ってね〜」と言った。
……テスト期間中にわたしの人生終わるんじゃないかな。
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