第3話 考査
1.
結局熱が下がって体調が戻るまでに、週末を挟んでしまった。
それまで稔は毎日看病してくれた。
会長は気を使ったのか、あれから家に来ることはなかった。
学校に来れるようになった月曜日。
いつものように稔と学校に来て、教室に行くといつものように藍花が先にいた。
「おはよう。体調はもう大丈夫?」
私が来たことに気づいた藍花は、私の席に来てそう言う。
「うん。もう万全だよ」
笑顔で答えると、藍花も安心したように笑った。
クラスの仲良い女子たちからも、体調は大丈夫かと訊かれる。
こういうのは嬉しいもんだね。
でも、普段ほとんど喋らない、ちょっと派手目な女子たちからも、「学校に来られるようになって良かった」と言われる。
……何でだろう?
その子たちが私から離れた後、藍花は吐き捨てるように言った。
「薄情よね」
「え?」
「あいつら、 李眞が休んでる間ずっと会長に会えないって言ってたわよ」
……会長に会えない?
会いたいなら会いに行けばいいじゃないか。
……あ、そういうことか。
「私は会長を召喚する奴とでも思われてるのかな」
「まぁ、そうでしょうね」
私がいなければ、会長はここのクラスに来る用事もないってことか。
「モテるのに浮いた話を全く聞かなかった会長が、李眞に告白したから、会長のこと好きだった女子は諦めてるらしいわよ」
それは何とも不憫な。
私としては是非とも会長を諦めずに振り向かせてほしいのだが。
「会長、彼女作ったこともないらしい」
「え、そうなんだ。 意外」
でも、告白されても断ってるんだったら、付き合ったことなんてないのか。
やっぱり会長って謎だな。
なんで私のこと好きになったのかも、全然わからないし。
「あんな完璧人間がなんで私みたいな冴えない奴を好きになったんだろう」
ボソッ呟くと、藍花は私の名前を呼んだ。
「自分では気づいてないでしょうけど、李眞にはいいこといっぱいあるんだからね。私がずっと李眞と一緒にいるのもそう。会長だって、そんな李眞のいいところを好きになったんでしょ」
「そうなのかな……」
正直、会長が私のこと好きってまだ完全に信じきれてないところもある。
藍花が言ったことが本当なら、私のいいところって何なんだろう。
考えたってよくわからない。
会長に訊くのが一番早いけど、それは恥ずかしいというか、何だか躊躇ってしまう。
「今日、昼休み会長来るの?」
藍花に訊かれて、どうだろうって答える。
稔から会長に、私が学校来れるようになったって言うって言ってたけど。
「李眞がいるんだから、来るでしょうね」
その藍花の言葉通り、昼休みに会長は教室に来た。
しかも今日はお昼まで一緒に食べると言う。
今までずっと、お昼を食べ終わってから来てたのに。
朝の1件があってからか、会長に会えた女子たちがちょっと生き生きして見える。
「手幡さん、体調はもう大丈夫?」
しかし女子たちの視線を無視して、会長は私と藍花のところに一目散。
お気楽なのか、慣れてるからなのか。
「うん。会長お見舞い来てくれてありがとう」
「どういたしまして。俺が手幡さんに会いたかっただけだから」
……さらっとこういうこと言うから、慣れてるんだろうな。
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