7.




「というか、 李眞、これ何?」



藍花はテーブルに置いてある物を指さす。


何って……。



「勉強道具だよ?」



そう答えると、バカなの?と怒られる。


うう、稔の次は藍花の説教……。


私、病人なのに……。



「病人なら病人らしく寝なさい」



昨日も稔から聞いた台詞。


昔から私が頼りないのか、よく2人から説教されていたけど、最近の藍花と稔は説教が似てきてる気がする。



「で、でも、よくわかんなくて諦めたから良いじゃん!!」


「いいけど良くないわよ。体調良くなったら、私と稔で勉強教えるから」


「……それはやだ。稔と藍花、わからなかったら馬鹿にしてくるからやだ」



会長とトップ争いするぐらい成績のいい2人。


教えるのも上手いから、テスト前は毎回勉強に付き合ってもらっていた。


稔と藍花はため息を吐いた。



「毎回毎回そう言うくせに、結局頼ってくるじゃねぇかよ」


「今回は頼らないもん!!」


「その台詞も毎回ね」



うぅ……。


でも今回は違うんだ!!



「会長!!」



今まで蚊帳の外だったのに、いきなり私が呼んだことで、会長は驚いて「何?」と答えた。



「私に勉強教えてください!!」


「……俺が?」



会長だけじゃなくて稔も藍花も目を丸くした。


ふふん、今の私には会長という強い味方がいるんだい。



「会長、ダメ?」



首を傾げてそう訊くと、会長は頭をかいた。



「いや、ダメじゃないよ。むしろ嬉しいっていうか……」



何を言っているのかわからないぐらいの声で、会長はごにょごにょと続ける。


とりあえず、会長から勉強を教えてもらえるんだ!


稔と藍花からの罵倒とはおさらばだ!!



「会長ありがとう!」



そう言って笑顔になれば、会長は少し照れたように、「どういたしまして」と返した。



「でも、勉強は熱が下がってからね」


「うん、もちろん」



会長から勉強を教えてもらえるってことより、稔と藍花から馬鹿にされないってことの方が嬉しくて、私は3人を気にせず鼻歌を歌う。


そんな私を見て、稔はまたため息を吐いた。



「会長、こいつに勉強教えるの結構大変だろうけど頼んだわ。無理なら無理って言ってくれていいから」


「何その言い方」


「馬鹿にしなきゃお前の頭の悪さに付き合ってられないって言ってんだ」



心外だ。


仮にも従妹に対して、今までそう思っていたなんて。


これからは伯父さんと喧嘩しても泊めてやらないんだから。


ムスッとして稔を睨むと、会長はあははと笑った。



「手幡さんの期待に答えられるように頑張るよ。成績上がったら、俺への株も上がるでしょ?」


「それを言わなかったら、株上がるのにね」


「それは残念」



とかいいつつも、笑顔の会長。


腹黒は相変わらずだ。



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