4.




次に目を覚ました時、視野は見慣れた天井だった。


ここ、私の家……?


いつの間に帰ってきたんだろう。


というか、どうやって?


ゆっくりと体を起こす。


たくさん寝たのに、さっきより頭が重い。


体も熱い。


普通に息しようと思っても、呼吸が荒くなる。



「手幡さん、起きて大丈夫?」



幻覚でも見ているのかな。


なぜか私の家に会長がいる。


理解できなくて、幻覚の会長をじっと見る。


会長は私に近づいてきて額に触り、「まだ熱いね」と言う。


幻覚にしては手の硬さも精密だ。


じゃあ、夢か。


私は会長の手を取り、頬に寄せる。


会長の手、冷たくて気持ちがいい。



「ちょっと、手幡さん……」



慌てた会長の声。


離して、と会長は言うけれど、私ははにかんで、やだと言った。


現実だったら仕返しが怖いけど、ここは夢だ。


普段見れないんだから、もうちょっと会長の慌てたところを見たい。


会長の手を頬から離し、ぎゅっと握る。



「会長の手、おっきいねぇ」



ゴツゴツしてて、硬くて、男らしい手。



「あ、私より爪綺麗。いいなぁ」



なんて呑気なことを言っていると、会長は立ち上がった。


上から見下ろしてくる。


どうしたの、と首を傾げると、会長は低い声で言った。



「いい加減離さないと、襲うよ」


「やーだ。まだ会長の手で遊ぶー。夢だから会長に襲われても何ともないもーん」


「……夢だと思ってるの?」


「違うのー?」



えへへ、と笑う。


会長は困ったような顔をしてため息を吐いた。


会長が困ってる。


楽しい夢だなぁ。


自然に笑みが零れる。


でも会長は違うみたいで、「何が楽しいの」

と呟いた。


そして、ベッドのギシッという鈍い音と同時に、私はベッドに倒れていた。


さっきまで起きていたのに、仰向けになっている。


目の前には会長。


……どういう状況?


会長の綺麗な顔。


さらさらとした髪。


ガッチリとした首筋。


筋肉質な腕が私の頭の横で会長の体を支えている。


全てがリアルだ。



「夢、じゃない……?」


「そうだよ。夢じゃない」



クラクラしていた頭が一気に冴える。


……なんていうことだ。



「でも、手幡さんが夢だと思っているならそれでいいよ。俺は躊躇なく襲える」


「お、落ち着いて会長」


「俺は十分落ち着いてたよ。でも好きな子から襲ってもいいって許可が出たんだ」



いや、別に許可は出してない。



「襲われても文句言えないよね」



会長はそう言って、顔を私に近づけた。


反射的に目をぎゅっと瞑る。


額に柔らかい物が触れた。


私は目を見開いた。


コツンと私と会長の額がぶつかる。


近距離で会長と目が合う。



「やっぱり、まだ熱いね」



一瞬会長の顔が離れ、次は額よりもっと下の方に会長の唇が近づいた時。


玄関でガチャという音が聞こえた。


会長は舌打ちをして私の額にもう一度唇を落とし、 離れた。


た、助かった……?



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