4.
次の日から宣言通り、会長は必要以上に私に話しかけるようになった。しつこいぐらいだ。わざわざ教室にも来る。クラス割と離れてるよね?やっぱり暇人なの?
あと、結構なナルシストだ。今日の小テスト満点だった、とか、模試の結果が良かっただとか、体育のサッカーでゴールたくさん決めただとか、そんなの言われなくてもすごい人だってわかるのに自慢してくる。
でも、人気者の理由がわかる。話せばすごく楽しい。自分の自慢話でも、結局楽しい話題に変わっている。可愛いって言って私をからかうけど、馬鹿にしてくることも絶対にない。気を抜かないでねって言ってたのに、何かしてくるわけでもない。
気遣いもすごくしてくれる。会長が告白した相手が私だってのが広まるのは予想より遥かに早かった。だから、会長のことが好きな女子から何か恨みを買うんじゃないか、って心配してたけど、ただの杞憂だった。稔から聞いた話だと、事前に会長が手回ししていたらしい。
だからこそ。だからこそだ。
「そろそろ会長への返事、どうするの?」
会長に告白されてからそろそろ2週間が経ちそうな日の昼休み。いつものようにお弁当を食べながら、今まで何も言ってこなかった藍花がとうとう口を開いた。
「やっぱり、そろそろ返事しないとだよね」
「そりゃ、これ以上待たせるわけにはいかないわよ。断るつもりなんでしょ?」
お見通しかぁ。さすが、小学生からの付き合いは違う。うん、と私は頷いた。
「だったら尚更、早く言わないと」
次は小さく頷いた。様子の違いに気づいた藍花は、何か引っかかるの?と優しい声で訊いてきた。その優しい声が今は痛い。泣きそうになる。
「あのね、藍花。断るけど友達でいたいってのはダメなのかな……?」
彼と関わってから気づいた。私は彼に相応しくない。彼はすごい人だ。だから、彼には藍花みたいな女の子の方が相応しいと思う。
当然、そんな思いだから、彼に恋愛感情を持つことはできなかった。でも、今の楽しい時間を捨てたくない。 今の関係を続けたいと思うのは傲慢なのだろうか。
そう藍花に言うと、藍花はふっと優しく笑って、「李眞は優しいね」と言った。
「答えは決まってるのにずっとそれで悩んでたんでしょ。そんなこと言ったら会長が傷付くんじゃないかって」
「うん……」
「それでいいのよ。李眞がたくさん悩んで出した答えなら、会長は絶対受け入れるわよ」
「そう、なのかな」
「そうよ。李眞は気付いてないでしょうけど、会長、李眞が思っている以上に李眞のこと好きよ。だから大丈夫」
断るんだから、傷つけてしまうのは当然か。それなのに、その傷をできるだけ深くしないようにすることしか考えてなかった。それは自己満だ。会長のこと、ちゃんと考えてなかった。
「藍花、今日の放課後、会長のところ行ってくるね」
会長のためを思うのなら、早く答えを伝えないと。頑張っておいで、と藍花は笑った。
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