拓海千秋(8)狩りの夜

 やつらは闇に溶け込み、森の静けさを引き割くことなくゆっくりと獲物の巣を取り囲み、いざ狩りのはじまりとなると一切の容赦はなかった。


 黒い外套を被ったその集団――ブラックフードと呼ばれるプロの奴隷狩りたちが僕らを襲ったその夜。

 川の上流に新たなキャンプを築いていた第二離反グループは見張りにサッカー部の渡利隼を立てていた。僕らのキャンプでは最低でも二人置いていた見張りが、彼らのキャンプでは一人になっていた。


 なぜ篠原智彦と森末沙耶だけが逃げきることができたのか。


 それは多分、誰もが想像する全容からおそらく少しもはみださない、よくある事情からなのだろう。

 クラス公認のカップルである二人からすればさして珍しくもないし、非難される謂れもない。

 その行為自体は何ら非難されることではない。

 でも、篠原智彦と森末沙耶は行動を一緒にした仲間を助けることもなく一目散に逃げだし、キャンプにいる時生先生たちはおろか、偶然出くわした僕と瀬名波さんにも何の警告も残さず黙って走り去っていった。

 これはおおよそ、僕のイメージにある篠原の行動と違った。


 篠原はかっこよくて、運動神経が抜群で、学生バンドのボーカルで、クラス一の美少女を恋人に持っている。

 だけどそうした完璧さを嫌味に感じたことはない。

 新聞部の林田のようなナルシズムがなかったからかもしれない。

 芸術の選択科目が美術で一緒だったために彼の肖像画を描いたこともあるが、そのときも特に陶酔している風もなく自然で、僕が描いた絵についても「よく描きすぎ」と照れていたくらいだ。

 素行についても僕個人は彼に何をされたということもない。

 仲間思いの人に見えた。

 この世界に漂着した最初の夜も、率先してリーダーシップを取っていた。

 そんな彼がクラスメイトに警告もせず、最も大事な人の手だけを引いて、逃げだした。

 それだけ事態が切迫していたということだがそれでもたった一言、


「危険だから早く逃げろ」


 くらいの言葉はかけてほしかった。

 なのに黙って逃げるなんて。

 それとも彼の行動こそ正しかったのだろうか。

 全員を助けることなんてできないから。

 一番助けたい人を助けることしか僕らの子どもにはできないから。


 だとすれば僕と瀬名波さんがやろうとしていることは明らかに無謀だった。


「何が起きてるんだ」


 浜辺で星を眺めていた鹿山亮太も、森の異変に気付いていたらしい。僕らが血相を変えて戻ってきたのでいよいよ切羽詰まった事態なのだろうと見抜いた。


「川上のキャンプから火の手が上がってるの。篠原くんと森末さんが逃げてくるのを見たわ」

「二人は何か言ってたか」

「ううん。でも、逃げた方がいいと思う」

「わかった。みんなを起こすぞ」


 僕らはキャンプに戻ると見張りについていた吾郷薫と道垣内皐に事情を説明し、手分けして皆を起こしていった。大声を出して一気に叩き起こす方が良かったのかもしれないが、敵がこちらに気付いていない可能性もあった。

 なるべく静かに準備を進めた方がいい。


「屋島、起きて」


 滅多に全力疾走しない僕は、乱れた呼吸のまま眠っている屋島の肩を揺さぶった。

 屋島を起こすと次は時生先生を。

 なるべく大きなパニックにならないよう注意を払いながら、起床を促し、逃げる準備を整わせた。

 ある程度の仲間を起こすと柔道部の吾郷薫が焚火の火を消して、見張りに戻った。

 みんなの逃げ出す準備ができるまで周囲を警戒する必要があったからだ。クラス一の巨体の反面、穏やかな性格の彼がこうしてテキパキと動く姿は頼もしかった。

 さすが柔道部主将だ。


 でも、特別なのは彼ぐらいで、あとのみんなは歳相応の子どもだった。

 一人起こしていくごとにパニックの火種は大きくなり、不安と恐怖がみんなの間で広がっていく。

 そんなとき時生先生は僕らの数を数えながら、


「落ち着いて」

「はぐれんように一人ずつ手ぇつなぎ」

「気分悪い子はおらへんか」


 と声をかけながら、一人一人、肩を叩き、頭を撫で、腕を引っ張り起こしていた。

 やっぱり、彼女は頼りになる大人だ。

 けれど、頼りすぎちゃいけないとも思った。


「なぁ、拓海」


 僕の所まで来ると時生先生は周りの子に聞こえないようそっと耳打ちした。


「救助隊やないんか」

「悲鳴が聞こえたんです。何度も」


 先生に倣って僕も声を抑えた。


「それに篠原くんと森末さんが逃げてきたんで、きっと危ないと思って」

「二人はどこ行ったんや」

「それが……」

「逃げましたよ」


 僕が答えに窮していると瀬名波さんがぽつりと答えた。

 ちょっと冷たい印象すら受ける声音だったが、傍らにいる江藤を見てから少し穏やかな顔に戻って、


「ここに戻ってきたのは、拓海くんがみんなを助けるって。そう言ったから。私一人なら多分同じように逃げてたかも」

「拓海が?」


 時生先生がまるで「やるやんけ」とでも言いたそうな顔で僕を見た。

 しかし、照れる暇もなく見張りについていた吾郷が血相を変えて僕らの方に滑り込んできた。


「来た。拓海くんの言う通りだ」


 吾郷が飛んできた方向に目をやる。

 森の奥で火の玉がかすかに明滅して見える。

 それもひとつじゃない。

 何十個もの火が揺れながら、どんどんこちらへ迫ってくる。


「行こう、みんな!」


 騒然とするクラスメイトたちに号令をかけ、屋島が先頭に出た。

 足の遅い仲間を先に出し、陸上部の飯塚と天満が女子たちの最後尾に、その後を守るように柔道部の吾郷薫と剣道部の桐谷健二が殿についた。

 僕は偶然瀬名波さんの後ろにつく形になって、時生先生と併走した。


「こけたあかんで!」

「先生こそ!」


 砂浜に出ると、屋島は事前の段取り通り、僕らが来たのとは逆の方向に進路をとった。

 しかし、


「来た来た来た!」


 吾郷の絶叫とともに後方五十メートルの森から『やつら』が一気に流れ出てきた。

 大地の唸りのようないくつものけたたましい足音。

 振り返った僕は目を疑った。

 中世の合戦シーンを見るように、何十頭もの馬の群れがこちらに迫ってくる。

 漆黒の馬。

 鞭を叩く騎手の黒いシルエット。

 はためく外套。

 腰の傍らでランタンの光が蹄のリズムに合わせて激しく揺れている。

 どう見ても救援隊なんかじゃない。

 自衛隊でもなければ、他国の軍隊でもない。

 まるで死神の群れだ。

 角笛らしき音が夜の空に響く。

 追われている。

 追い込まれている。

 追手の放った音色が僕らの理性をかき乱す。


 逃げろ。


 本能が両足を急かす。けれど砂浜が足を掬い、思うほど早く走れない。

 焦りから息がどんどん荒くなる。

 その間も蹄の音が大地を鳴らして近づく。

 走りながら泣きだす女子たち。

 声を枯らす男子。

 ついに騎馬の先頭が最後尾を捉えた。

 両脇から挟みこまれ、網が投げられる。

 十畳はある大きな網が巨人の手のように一瞬で頭上に広がる。

 すんでのところで僕と先生は免れたが、足の遅い沢代や日ノ下、藤井が捕まった。


「先生!」


 網にかかる前に咄嗟に後退した吾郷薫と桐谷健二も後から来た黒い外套の男たちに背中を蹴られ、たちまち砂地に沈んだ。

 必死にもがいて抵抗するも、一発の銃弾が砂地を抉るとともに二人の後頭部にライフルのような長い筒が押し付けられた。


「吾郷、桐谷!」


 二人に駆け寄ろうとする時生先生。

 しかし、そのとき前方からも同じように銃声が響いた。


「きゃあああ!」


 後方に気を取られている間に、前から別の一団が森から飛び出して、先頭を走っていた屋島と飯塚の前を塞ぐ。


「なんなんだよ、お前ら!」

「お願い、やめて!」


 悲鳴を掻き消す騎馬の嘶きとともに更なる網が投てきされ、屋島と飯塚、五十嵐に玖野、道垣内、天満、そして江藤が捕まった。


「ノリちゃん!」

「結依、拓海くん!」


 網の目から必死に手を伸ばす江藤。

 その手を掴む瀬名波さん。

 見ていられず僕は急いで網の袖に手をかけて江藤を助け出そうとした。

 しかし、


「拓海!」


 先生の声の後で一発の銃声が鳴り響いた。

 振り返る間もなく僕の横に時生先生の身体が覆いかぶさるようにぶつかってきて、僕はそのまま地面に押し倒されてしまった。

 何が起きたのかわからず、必死に上に乗っかった時生先生の身体を押し上げる。

 先生の苦痛の声が耳朶を打つ。

 ゴロリと僕の傍に転がった先生の足から真っ赤な血がどくどくと砂地に溢れていた。


「先生!」


 瀬名波さんが悲鳴を上げる。

 まさかと思い自分の身体を調べるが撃たれた様子はない。

 ゆっくりと顔を上げると、正面にライフルと思しき筒を握った黒衣の男が立っていた。

 そいつは無表情のまま、重傷を負った時生先生に銃口を向けた。


「やめて!」

「先生!」


 捕まった飯塚や屋島が声を上げる。

 だが、男の目は本気に見えた。

 足を抑え、身体を丸める時生先生。その先生の顔が目に飛び込んだ。

 いつもどっしり構えていて、弱気なことなんて言わない。

 あの学校で唯一、僕を気にかけて、美術準備室という居場所を提供してくれたその人の、痛みと恐怖で泣きぬれた、顔が。


「やめろ、千秋!」


 気がつくと僕は黒衣の男に向かって突進していた。

 ライフルにしがみつき、奪い取ろうとした。

 けれど非力な僕にそんな器用な芸当ができるわけもない。

 無我夢中で突っ込んだ挙句、肘鉄を食らい、鳩尾を蹴られて、消沈した。

 膝から崩れ落ちるように倒れるとトドメの蹴りを食らって、みんなの悲鳴を浴びながら砂浜に仰向けでダウンした。


「たっくん!」


 数秒、意識が飛んでいたらしい。

 目を開けると満天の星空で、夢かと思ったけどすぐに捕まったみんなの恐怖と動揺の声がそこら中からした。

 誰かの足音が聞こえる。

 仰向けから右に身体を起こし、立ち上がろうとしたそのとき、何者かが乱暴に僕の背中を踏みつけた。

 ゆっくり体重をかけて、成す術もなく僕は砂の上に突っ伏した。

 顔を捻って、前を見ると真っ黒なブーツの先が視界に広がった。


「========」


 ブーツの主が聞きなれない言語を発する。

 声は少しハスキーで、女性のように聞こえた。

 言語の意味はわからないが語気や、その声に従って周りで他の黒衣の男たちが動く様子から察するに何かを命じているのだろうということは想像ができた。

 男たちが動いている間、傷だらけの一足のブーツは片時も僕の目の前から動かない。やがて両足の付け根が前にゆっくりと倒れて、ブーツの主が僕の前にしゃがみ込んだ。


「=========」


 僕に向けて何かしらをぼそっと呟いた次の瞬間、ブーツの主が僕の左耳を掴んで、毛虫に似た得体のしれない物体を鼓膜に向けて流し込んだ。


「うわあああああ!」


 痛い、熱い。

 片耳を這うような虫の感触は全身を侵した。

 もがいて叩きだそうにも身体は黒衣の男たちに取り押さえられていて自由が利かない。

 全身の毛が逆立って、がさごそと無数の足で駆けまわる音が頭蓋に響き渡る。

 永遠とも思える悪夢の時間はおよそ一分続いた。

 失禁し、鼻や口から体液をとめどなく垂れ流して、それでも気絶することはできなかった。

 やがて音が広がって、浸透し、消えていくように虫の気配が頭の中から霧散していくとブーツの主が僕の髪の毛を引っ張って、体液まみれのふぬけた顔を覗き込んだ。


「……だ、これで私の言葉も聞き取れるようになっただろう」


 相手はやはり、女だった。

 長い黒髪に、蛇のように冷たい右目。

 左目は眼帯に覆われ、頬にかけて切りつけられたような浅い傷が一本走っている。


「やっぱり二十六人しかいない」


 隻眼の女に黒衣の男の一人が告げる。

 連中は皆一様に黒いフードを被り、軽装の鎧を身に纏っている。

 腰に差した短剣と曲がった長剣。

 柄にかけられた右手は黒い革の手袋に包まれている。ズボンもブーツも黒。

 全身黒づくめの男たち。

 その中でただ一人、隻眼の女だけが装備の各所に赤いアクセントを散りばめていて、一種の頭目のようにも見えた。




「そんなはずはない。門をくぐったのはきっちり四十人だ。やつらも言ってただろう。ここに二十八人残ってると」


 あれ?


 いつのまにか、連中の言葉が聞き取れるようになっている。どうして。


 いや、それよりも隻眼の女の話の方が重要だ。


 門? 

 四十人? 

 やつらって誰だ。ここに二十八人? 


 虫の感触が消えても背筋に悪寒が毛虫の足跡のように残っている。

 それが余計に、単純な言葉の羅列の意味を解読しづらくした。

 こんなのはたいした会話じゃない。

 要するに先に捕まった夏見たちが僕らを、売ったんだ。


「あと二人、見つからない」


 隻眼の女は僕の髪を引っ張り上げたまま、もう片方の手を腰に回した。

 金属の刃が革のベルトを滑り、よく研がれたナイフが眼前をゆらゆらと漂った。


「逃げてきたはずだ。ここまで。そして、今はもうここにいない」

「……」

「どこに行った」


 多分、篠原智彦と森末紗弥のことだ。

 二人は逃げた。

 僕らに遭遇して、でも黙ったまま海岸を東へひた走った。


「やつらはお前たちに何も警告しなかったのか」

「……」


 警告。

 そうだ。

 あの二人は僕たちのいた方向ではなく、まっすぐキャンプを目指していたなら、飯塚も屋島も時生先生ももっと遠くへ逃げられたはずだ。

 なのに……。


「どうした。もう言葉はわかるようになっているだろう」


 いつまでも黙っている僕に、隻眼の女が苛立ちを募らせていく。

 溜息が漏れ、ナイフの刃が僕の頬をギリギリ切らない距離で撫でていく。


「こ……言葉が……わかる?」

「お前に入れた虫を私も頭のなかに飼っている。だから、私にもお前の言葉はわかる。心配するな。今、私の声が聞きとれているのはお前だけだ。仲間を売っても、そこにいるお友達たちにはわかりはしない」

「……」

「早く答えろ。でないと」


 隻眼の女は僕の頭を地面に押し付け、刃の切っ先を喉に当てた。冷たい一本の線にすぎない感触が、息をするたびに深く、近づく。


「たっくん、言って!」


 身動きがとれずにいる僕の耳に瀬名波さんの声が届いた。

 彼女らしくない低く、うめくような声だった。

 頭を抑えられていて、今の僕に見えるのは隻眼の女のブーツと穏やかな海の波だけ。

 彼女がどこで、どんな風にしているのかはわからないが、僕と同じく切迫した体勢でいることは間違いなさそうだった。


「ただの脅しじゃない! そういう人たちじゃないわ!」 

「ほう」


 瀬名波さんの言葉に、隻眼の女が関心を示した。

 僕を守ろうとする勇敢さのために、というのではない。

 彼女が隻眼の女の言葉を理解していたからだ。


「まだ虫を入れていないのに、私の言葉がわかるのか」

「……」

「それに、私たちのことを知っているみたいな口ぶりだな。いったい何者だ。ここのことを知っている人間がいるなど、聞いていないぞ」


 瀬名波さんは答えない。

 隻眼の女は彼女の沈黙を笑うだけで、再び僕の喉に当てたナイフに力をこめた。


「そうだ。脅しじゃない」


 薄く、刃が僕の皮膚を切る。

 血が肌を伝って流れていくのを感じる。

 早く言わなくちゃ、本当に殺される。

 彼女は僕たちが今までに出会ったことのない世界の人間だ。

 異世界かどうかってことじゃない。

 人を殺すことが普通の世界に生きてる。

 そういう連中に比べたら、人殺しでもなんでもない篠原や森末を売って、恨みを買うことなんてどうってことはない。


 だから――。


「答える気がないなら、もう終わりに」

「東に逃げていったわ!」


 震える喉から声を絞り出そうとした矢先、瀬名波さんがそう叫んだ。

 みんなに聞こえるくらいの大きな声で。


「向こうの岩礁を越えて、二人して逃げて行ったわ!」

「せ、瀬名波さん?」

「お願いだから……その人を傷つけないで」


 彼女の必死な訴えを聞いて、数秒間隻眼の女は僕の喉にナイフを当てたまま黙っていた。

 疑っているのか。

 やがて笑みを浮かべるような息づかいが聞こえて、隻眼の女は黒衣の男たちに指示を発した。

 馬が嘶き、数頭砂浜を東に向かって駆けて行く。

 それと同時に僕の喉仏に薄い切れ込みを入れていたナイフがやっとのことで収められた。


「女に救われたな」


 乱暴に僕の頭を撫でて、女は立ち上がった。


「恋人を守るために仲間を売るとは、懸命な判断だな。私の知り合いにも同じ手合いがいるがそういう女は大抵、同性に嫌われる」

「仲間じゃ……ないわ」


 瀬名波さんは一番にそう否定した。

 僕のいる側からでは彼女の表情はわからない。

 直後、飯塚たちの間で一層高い悲鳴が上がった。

 黒衣の男たちが重々しい鎖と黒い布を手にぞろぞろと動きだし、クラスメイトたちに何か危害を加えている。

 ここからじゃそれしかわからない。

 屋島が叫び、瀬名波さんが抗議し、江藤が泣きじゃくっている。

 男たちの手を振りきり、湯浅まなみと鹿山亮太が網から飛び出して抵抗する。

 しかし、喧嘩に慣れていない湯浅は背後を突かれ気絶し、場数を踏んでいると思わしき鹿山でさえ、素手のみではそう長い間善戦することはできなかった。

 僕はその間、もがくことしかできなかった。

 抑えつけられたまま、なんとかできるはずもないのになんとかしたいと身体をよじって、暴れて、でもどうにもならない。

 固い鎖が両手両足に容赦なくかけられていく。


「何でこんなこと……どうして」

「移送が済んだら、話はそのときにしてやる。だが、それまでは」


 隻眼の女が再び僕の前に腰を下ろし、手にした黒い頭巾の口を広げる。

 それを僕の頭に無理矢理被せようとする刹那、女の手の甲に見覚えのある絵柄を認めて、僕は戦慄した。


「大人しく眠っていろ」

「やめっ――」


 八角形の真っ赤な魔法陣。

 その真紅の紋様が目に焼き付いたまま、僕は暗闇に放り込まれ、滑り落ちるように意識を失った。

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