拓海千秋(4)変わり者たち

「やっと起きたか、拓海」


 僕が目を覚ましたのを見て、副担任の時生先生がそこらで座り込んでいる同級生たちの間を縫うように歩いてこちらへ来た。


 時生万葉。


 美術教諭で、来年の春には結婚を控えている三十間近の女性教師だ。

 スポーティー―なショートカットに、グレーのテーラージャケットとブラックのスキニ―パンツ。裏表のない性格から生徒の人気者である。

 僕の何かしらがお気に召しているらしく、美術部に勧誘したり、人の恋路に口を挟んだりと気にかけてくれている。


「どうや。身体におかしいとことかないか」

「はい」


 おまけに大阪人だ。

 茨木という町の出身らしい。「いばらき」と聞くと茨城県を思い浮かべるから、先生は必ず『快速で高槻の前の駅の方の茨木やで』と注釈を加えたが、阪急京都線の駅名で説明されたって、広島の高校生にわかるわけがない。


「先生はどうなんです」

「うちか。見ての通り、ひとまずはピンピンしてるで。つうことは、これで全員怪我もなくゆうことか。奇跡やな」

「全員の状態、確認したんですか」

「当たり前やろ。でも三十八人だけやからな。そんな骨折れることでもないで。気分悪いっていう子もいてないみたいやし、そら精神的には参ってるかもしれんけど、あれだけのことがあって、こうして無事でおるのは、ほんま奇跡やで」

「むしろ、ここからが大変そうですけどね」

「せやな。今のうちに名簿作って、飯のたんびに点呼せなあかんな。ペンもないし、インクもないけど」


 困ったように頭をかく時生先生を見て、江藤が感心してみせる。


「時生ちゃん、副担任っぽい」

「なんや、江藤。そら自分らの副担任になったのは二学期からやけど、旅行の間もずっと面倒見てたやろう」

「えぇ! 副担なのをいいことに楽しんでるように見えましたけど」

「あのなぁ……」

「ダメだよ、ノリちゃん。こう見えて、時生先生はみんなのことちゃんと見てるんだから」

「瀬名波、フォローは嬉しいけど『こう見えて』は余計やで」

「っていうか、どっちが担任だがわかりませんね」


 クラスの輪から外れて、砂浜の真ん中で途方に暮れたように項垂れる担任の姿を見つけて、僕の口から思わず嫌味が零れた。


 久遠健介。


 色白で細身。名前の割に特別なところなんてひとつもない。

 まぁ、それを言ったら僕もそうだけど。

 彼は自ら選んで教師になったのに、僕らの担任に就いてから今日まで一度たりとも担任らしいことをしたことがない。


 本当に、ただの一度もだ。


 大学の授業で必要な単位を取れたから教師になっただけ。

 そんな風な男だから、実に頼りなく、どんな問題からも真っ先に目を背ける。

 昨日の晩もそうだ。

 海面でパニックに陥る僕らに必死に声をかけて島まで導いてくれたのは副担任の時生先生の方で、久遠先生は我先にと一人で黙々と波を切って泳いでいただけだった。

 島に辿りついてからも篠原や大庭や飯塚たちが仕切るに任せて、まるで他人事みたいに夏見梨香のギャルグループの後ろで突っ立ていた。


 僕が久遠先生のことを嫌いなのは、時生先生も知っている。

 でも、時生先生はいつも僕らに混じって愚痴を言うことはなかった。


「そんなん言うたあかんで、拓海。久遠先生はこのクラスの担任や。みんなの親御さんから大事な子どもの命預かってんねん。まぁ、うちも一緒やけど。あの人に比べたら、うちなんて無責任もええとこや。久遠先生は……」


「みんなの命」


 僕たちの後ろから、わざわざ聞こえるようにはっきりとした声でその独り言は呟かれた。


 声の主は五十嵐真由子(出席番号3番)だった。


「みんなの命、って言いました? さっき」


 名前ほどその気性は荒々しくはない。

 むしろ物静かで何を考えているかわからなくて、その言動はいつもとらえどころがない。

 不穏なことや意味深なことを言っては嵐が来るのを待っているようなそんな不思議な女子だ。

 腰まで届く長い黒髪は決して絡まることがないんじゃないのかと思われるほど一本一本がまっすぐで、その視線はいつも相手に向けてまっすぐ放たれた。

 時生先生でさえ、彼女の視線の強さには一瞬たじろぐほどだ。


「五十嵐?」

「本当にその自覚が彼にあるのかしら……いいえ、ないわね」


 五十嵐には『妖しい』という言葉が似合う。

 特にずばぬけた美貌があるわけではないのだけれど、纏っている影と何事にも動じない堂々とした佇まいが彼女を必要以上に美しく見せている。

 『白雪姫』の魔女とか『眠れる森の美女』のマレフィセントのようなそういう妖しげな美しさだ。

 彼女の親友と思わしき飯塚茉莉に言わせれば、ただの中二病らしいが。


「彼にはいずれ天罰が下る。そして、私がそれを見届ける」


 五十嵐は久遠先生に関する的確な評を残して、砂浜に出た。

 両手を前で組んで立ち去る様子は庭園を行く淑女のようにも見えたがここは無人島だ。


「どこ、行くんだろ」

「西の洞窟やろ。なんちゅう捨て台詞でトイレ行くねん」


 西の洞窟とは、飯塚たちが昨夜のうちに見つけた女子専用の『化粧室』だ。

 適当な場所で放尿すれば済む男子と違って、女子たちはいろいろと気を遣う必要がある。

 年頃の妹がいるからよくわかるが、女子には常に携帯していなくちゃいけないものが多い。

 化粧品やプリ帳、絆創膏にティッシュに、生理用品。

 なのに海に落とされた瞬間、すべての手荷物を失った。

 彼女たちのサバイバルは男子よりも過酷なものになるだろう。


 五十嵐と入れ替わるように屋島がやってきた。

 小さな木の実やヤシの実らしくものをいくつか抱えている。

 意味深な笑みを浮かべて立ち去る五十嵐の様子に首を傾げながら、ひとつを僕にくれた。


「これ、飲んどけ。俺と吾郷で外側の殻を割って、中身を取りだしておいた。森の奥に行けばもう少し取れそうだから、あとで一緒に行こう」


 ここで断るやつはぼっち以前に人としてダメだ。

 僕にだって協調性のひとつやふたつある。


「うん」

「じゃ、色とか大きさとか覚えておいて」

「私たちも行くわ」


 同じように屋島からヤシの実らしきものを貰った瀬名波さんが申し出る。

 けれど屋島は首を横に振った。


「いや、森の中はまだ何があるかわからないから、瀬名波さんたちは海岸で貝とか海藻類を集めておいてよ。篠原と飯塚たちが中心になって、役割を整理してる。俺と拓海は食糧調達。飲み水は大庭たちが中心になって調達することになってる」

「川、見つけたんか?」


 と、時生先生。屋島は頷いて、


「僕らが起きる前に設楽(つづら)が。あいつボーイスカウトにいたみたいで。水の確保は今飲んでるヤシの実の殻を使うそうです」

「設楽は物知りやとは思ってたけど。ボーイスカウトか。映画でしか見たことないわ」

「本当ですよね。はじめてオタクが役にたったぁーって、夏見たちが大喜びしてましたよ」

「失礼な人たちだね、相変わらず」


 なんだかさっきから、僕の口からは後ろ向きな言葉しか出てこない。

 なんとなく気持ちが苛立っている。

 わかっていても抑えきれない。

 他人をどうこう言える立場か。

 自分が一番役に立たないくせに。本当、僕って。


「いいじゃない。設楽くんが認めてもらえたのは事実だし」


 手近な石をヤシの実にコツン、コツンと打ちつけながら、瀬名波さんは言った。


「誰にでも特技はあるのに、披露できる場がないと、ないものだって扱われてる。学校だけが世界じゃないのにね」


 その通りだと思った。

 彼女はこういう達観した意見を述べることがときどきあった。

 教室ではほとんど見せない。

 主に所属するテニス部の練習を終えて、江藤紀子を迎えにきたとき美術準備室での談笑でほんの一瞬見せる横顔だが。

 童顔な顔立ちとは対称的にどこか大人びていて、諦観すら感じさせる眼差し。

 どういう人生を歩んできたら、そんな表情になるのだろう。


 なかなか実に穴を空けられない様子を見兼ねて、僕が手を出しかけるとそれを阻むように江藤が僕の肩を揺すった。


「ねぇ、拓海くん!」


 かなり興奮気味だ。

 何かとっておきのアイデアが浮かんだらしい。

 江藤が無邪気な笑顔で僕の名前を呼ぶとき、いつだって彼女のコンプレックスであるそばかすはその弱点感を失くして、不屈の明るさの前にチャームポイントと化す。


「私たち二人で食べられる木の実のスケッチするってのはどう? みんなに配れば、木の実探索のときに役に立つよ」

「ええっと……植物図鑑みたいな?」

「そう。あと、地図とか! 美術部の本領発揮のチャンスだよ!」

「江藤」

「なに、拓海くん」

「ペンと紙がない。無理だよ」

「あ……」


 肝心なことを思いだして、江藤は気まずそうに僕の肩から手を離した。

 美術室では繊細な筆遣いを見せるその手をじっと見つめて、


「そう、だよね。ははは……私も自分の特技で何かって思ったんだけど。ペンと紙がなきゃ無能だよね。ははは」

「ありがとう、江藤」

「そんな……別に……ああ、もう! ユイユイ、何笑ってんの!」

「笑ってないよ」


 そう言いつつも瀬名波さんの頬は俯き加減に緩んでいた。

 僕と江藤のやりとりに少し気が緩んだのだろう。

 彼女が笑ってくれるなら、僕は何でもいい。


「ちょっとトイレ行ってきます」


 目が覚めてから実はずっと我慢していたのだけれど、ようやく頃合いというか。タイミングを見つけたような気がして、僕は立ち上がった。

 するとどういうことか、屋島青児までも下ろしかけた腰を不自然に持ち上げた。

 明らかに僕の動きを受けてのアクションだった。


「あ、俺も」


 『あ』なんていうのはいかにもわざとらしくて、咄嗟に僕は反発した。


「いいよ。一人で行けるし」

「いや、そうじゃなくて――」

「二人で行ってき」


 とダメ押ししたのは時生先生だった。

 僕はどうにもこの大阪弁の女性教師の言うことには逆らえない節がある。


「何が起こるかわからへんし。拓海一人やと海に落っこちるかもしれんしな」

「落ちませんよ」


 ぴしゃっと断言して、僕は即席のキャンプを離れた。

 「ちょっと待てよ」と食い下がって追ってくる屋島は鬱陶しくもあったが、小学校の頃から変わらない彼の頑固さに、僕はかつての無垢な少年時代を思い出した。


 肩を叩く屋島の声に思わず振り返ると、ギャルグループの輪の中から立花柚の視線を感じて僕はちらりとそちらを見た。

 仕方なく屋島と連れだって歩いている僕のことを睨むように見つめている。

 二年に進級して、彼女と再会してからいつもこうだ。

 柚は何かにつけて僕を睨む。

 傍を通ると敵視するような、見下すような視線をいつも感じる。


「柚も大丈夫そうだな」

「ああ。そうだね」

「柚と喋ったか?」

「いいや。なんで」

「だってお前ら、仲良かっただろ」

「小学校のころの話でしょ。もう一七歳なんだ。いろいろあるでしょ」


 父親が再婚して、小学校の卒業式直後に引っ越してしまうまで僕は津田という山奥の町に住んでいた。

 屋島青児と立花柚とは幼稚園からの付き合いだったけど、中学進学とともに疎遠になった。

 このたった三年間は大人が過ごす三年間とは多分違って、人間同士の関係を決定的に変える。

 一緒に漫画を描いて遊んだ屋島は弓道部を立ち上げ、学級委員長にもなり、泥んこになるまでの山を駆け回った立花柚はまっすぐでサラサラしていた髪にパーマをかけて、けばけばしい化粧で素顔を隠すようになった。

 僕自身も小学生のころとは違う。少年漫画に憧れて掲げていたような勇敢さも、才能に対する絶対的な自信も、将来に対する展望も以前のようにはない。

 自分を出し過ぎて、中学時代は他人の悪意に攻撃されてばかりだったから、傷つかないためにただただ自分を抑えて、目立たぬよう、他人の気に障らぬように生きている。

 それなのに立花柚に睨まれるいわれが、僕にはどうしても理解できなかった。


「小便が出てるってことはやっぱり俺たち、生きてるんだよな」

「夢でだって小便することはあるでしょう」


 弓なりになった海岸の端っこ。

 森の入口に作った即席のキャンプが大きな点に見えるくらいの場所で僕と屋島は互いに背を向けて立ち小便をした。

 外で小便をしたのは二年ぶりくらいだろうか。

 それも他人と一緒にというのは、いよいよ自分たちが単なるキャンプとかバーベキューをしにきただけのような気分になってきた。


「なぁ、拓海」

「うん?」

「……千秋でいいか。昔みたいに」

「何、呼び方の話? なんでいまさら?」

「前から聞いておきたかったんだ。ほら、受験のときに声かけたら、嫌がってたから。千秋って名前、女みたいだって」

「あぁ」


 それは自分と同じ出身校のやつがいるなかで『千秋ぃ!』なんて大声で呼ばれたら、誰だって恥ずかしがるし、僕の下の名前を知らない同級生の笑いの種にだってなる。

 実際、その後も名前をネタにしつこく弄られた。


「前の中学では何て呼ばれてたんだ?」

「別に。ただの『拓海』って」

「普通だな」


 もちろんそれ以外にもたくさんある。


 コウタクミンとか、オタクミ(オタク拓海)とか、汲み(クミ)取り便所とか、千秋ん玉とか。

 ただの『クソ』とか『ストーカー』とか言われたこともある。


 でもそういうことを屋島に話してどうなる。

 笑いもしないだろうが、気まずそうな顔もしない。

 きっと自分のことのように怒るはずだ。

 直情的だから。

 正義の人だから。


 だから、僕は屋島が苦手だ。


 なんでも憤ればいいってものじゃない。

 仕方ないことだって世の中にはある。

 目を瞑ってやり過ごすしかない悪意でこの世は溢れてる。

 なのに屋島はいまだに自分がアンパンマンやスーパーマンのような人間になれると思ってる。

 割り切れない人間は、僕は苦手だ。


「瀬名波や江藤と仲良さそうだったな。教室じゃ喋ってるの見たことないけど」

「美術準備室で時生先生の絵の手伝いをしてることがあるから。江藤は美術部だし、江藤の迎えで瀬名波さんが来るからそれで多少は喋るだけだよ」


 僕は努めて冷静にチャックをあげた。モノは噛んでいない。


「江藤とは同じ中学なんだっけ?」

「うん。僕も江藤も美術部だったから、多少は喋る」

「へぇ……」


 モノをズボンに収めた屋島が振り向きざまに言う。


「千秋ってさ」

「結局、そう呼ぶんだ」

「瀬名波のことが好きなの?」

「はぁ?」


 名前を聞いた途端、僕は脊髄反射で否定した。


「そんな! ぼ、ぼぼ、僕は別に!」

「お前って昔からこういう話題には弱いよな。なんでもないフリしてればいいのに」


 僕の動揺を面白がりながら屋島が先を歩く。


「何でもないよ!」

「ムキになったりしてさ。図星にしか見えないぞ。いいじゃないか、別に。本当、瀬名波ってモテるよな。確か、他にも」

「もういいよ、その話題は! 声もでか――」

「――でかいのは千秋だろ。それにこんな会話誰も聞いてないって」


 他人の気配を感じた僕は屋島に黙れと促すよう背中を小突いた。

 「痛いなぁ」と何故か楽しそうに振り返った屋島だったが、僕と同じものを見て口をつぐんだ。


 怪物がいたわけじゃない。

 見知った女子が海岸近くの岩場に腰を下ろしていたのだ。

 足を組んで、黙々と木の棒の先っぽを平たい石で削ってる。

 ブラウスの袖をまくり、スカートが捲れるのも気にせず、波打つ前髪の奥でそのクールな目を光らせている。


「湯浅か?」


 本人に問うでもなく、屋島は呟いた。


 湯浅まなみ(出席番号39番)。


 出席番号順では屋島の次に来る女子だ。

 小学生のころから入退院を繰り返すほど身体が弱く一年のときも何かの移植手術のために二学期の半分を病院で過ごしていたそうだ。

 色白でときおり歩行もふらついて見えるときがあるが、彼女に病弱ゆえの線の細さや気の弱さは一切見受けられない。

 同情心で近づいたり、優越感を得ようとするクラスメイトがいれば、一睨みで跳ね除けるような強さがあった。


 僕が思うに、彼女ほど『孤高』という言葉が似合う女子高生はいない。

 同類として密かに彼女を尊敬してやまない。

 僕もあんな風にかっこよく一人になれればよかったのに。

 今のところ僕のぼっち具合は惨めさの方が際立っている。


「何やってんだろ」


 屋島が言った。


「自分で聞きなよ。後ろの席でしょ。二回連続で」

「よく覚えてるな」


 二回連続、というのは席替えのことだ。


「……たまたまだよ。たまたま覚えてただけ。一度くらい喋ったことあるんでしょ」

「まぁな。俺たちの今の会話聞こえてたのかな」

「だから、自分で聞いて――」

「――聞こえてないよ」


 聞く前に彼女の方が答えた。

 結構なひそひそ話だったはずだけど。

 ということは実際には聞こえてたってことじゃないのか。

 僕の不安を余所に、湯浅は木の棒の先を天に翳して、削り具合を熱心に確認している。

 その物騒な光景とは対照的に頭の横で結った長い髪が海風に靡いている。


「湯浅、そこで何やってんだ?」

「さぁ」


 どうでもいいけど、女子の苗字を呼び捨てにできるやつってなかなか度胸が据わってると思う。

 友達でもないだろうし、同じ部活とか同じ中学出身ってわけでもないのに。

 多分、屋島みたいな男子にだけ許されることだから、僕が呼び捨てにしたらまずいな。


「ひょっとして銛を作ってんのか?」

「ただの暇つぶし」

「休んでなくていいのか」

「こっちにいる方が休める」

「でも、みんなといた方が安全だし、一人でいるよりも」

「そうかもね」

「戻りづらいなら俺たちと一緒に」

「あと一本作ったら戻るわよ。ヤシの実集めに行くんでしょ。気をつけて」


 突き放すように言って、湯浅はぐるっと背中を向けた。

 そういう態度をとられたらさすがの屋島もこれ以上無理強いはできない。


「変わってるよな。湯浅って」


 彼女のいる岩場から十分距離を取ったあとで屋島は言った。

 悪口のニュアンスでなく、あくまで人物評のひとつといった感じで。

 僕は孤立したい湯浅の気持ちがなんとなくわかったから変わったやつだと思わなかったけど、それを言えばどうしてそう思うのかと返答が来るのはわかりきっている。

 僕は無個性に同意した。


「そうだね。変わってるね」


 僕が湯浅に感じているシンパシーとか、孤高さへの憧れを友情が一番の熱血青年・屋島青児に説明しても無駄なことだ。

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