第2話プロローグ2 高校生編



二章 一話「否定することなく過去と共に」



ーー "あれから"1年の時が流れ、中学生の少年は高校生になっていた。


東京の、有り体に言えば普通…… よりかなり偏差値が低い、というかちょっと変わった定時制高校に、ダルそうに登校する少年が1人。



今日は2月7日月曜、先週末に雪が降り、昨日少し気温が暖かくなったせいか、積もった雪がとけて固まった地面が歩きにくくなっている。


こういう時、新鮮だなと感じるタイプと、面倒に感じるタイプがいると思う、"俺"は後者だ。


さらに月曜という最も朝起きが辛い、布団から出れない、二度寝、サボる、のプロセスをどうにか乗り越え、今歩いている結果がある。


やはり原動力となったのは暖かいモーニングコール?


否!断じて否!…… 単位が危なかっただけです。遅刻でも、落としかねないほど、序盤でサボりすぎたせいである。


「ふーっ、勝ち取った未来を 」


とても頑張ったような気がして、ついそんなつぶやきをしてしまい、達成感に浸っている自分がいる。


どこをとっても、自業自得なんだけどね。


そんな中、世間はバレンタインデーに支配されている。


なんだこの鬱なイベントは?


お菓子を買って配る!というだけのことに、どうしてこんなに一喜一憂してるんだろう? さらに、義理やら本命やらお返しやらを戦略的に考える男女達。くっだらねぇ。


ま、そんな中俺は偉い!無駄にストレスを抱えることなく、今日も通常運転だ。


別に意識してるわけじゃないし! みんなもっと別のイベントを楽しむことが大事だと思う。例えば…… やばい何かおもいつくかと思ったら、貧困な思考力の俺氏は見事に撃沈。


「あー帰りてぇー、バレンタイン洗脳週間はほんとにかったるい 」


ひとり言がまた出てくる。こんな言葉が出てくる辺り俺も一喜一憂組かもしれない。意識なんてしてないんだからね! だってもらえるなんて、非科学的なこと起こるわけないんだもんね!



都立憂ヶ丘(ういがおか)高校


ここが「今」の俺が通う学校だ。


校門の前くらいから、さらに2月特有の話題が飛び交う。聞こえないフリしたいな〜


「誰からもらえるぅ? 」

「アタシあげなーい! 」


俺はいらないーい!


「やばい、2月前半だけ全てサボりたい。なぜ考えもなしに夏休み前、あんなにサボったんだろう 」


階段を登っても、無駄に一回降っても、飛び交う話題はなんら変わらない。


こいつら、意識共有体?いつからこんな高度な生命体に人類は進化したんだ。


そんなことを考えながら、やっと教室に着く。


2ーA、それが「今」のクラス。

やっぱりクラスも意識共有体である。しかし運だけは俺と意識共有体!何故なら窓際が俺の席だからな。


「お、今日は来たんだな〜エラす!」


そう俺に話しかけてくれるのは、入学当初からよくアニメやゲームについて語る同志!いわば同士!

の持木敏光(もちぎ・としみつ)だ。


「来たくないお〜、でも単位がね!俺にとってかけがえのない存在がね!教師に取られかねないからね 」


ものすごい情熱的に返す。


「ホントに主は入学当初から落とさないギリギリで休みますなぁ、大丈夫か?」


持木は引きこもりの不登校だったのに、この学校の特徴の一つ、過去を問わないを利用してやり直そうと決意して入学したらしい。この学校の模範的な例だ。


事実、持木はよく頑張っている、遅刻したり欠席しているのを見たことがない。尊敬できる奴だ。なんでこんなに俺とは違うのだ? ま、違う方がいいや。


そんな持木に俺は、不誠実極まりない回答をする。


「だってほら、落とさないギリギリまで休めると思って俺は入学したから、とことん限界を追求するぜ 」


全く、言っていて情けなくなるわ…… マジで。


「さすがのサボり魔ですな!では、そろそろホームルームがあるから戻るわ山宮(やまみや)氏 」


そう言うと持木は自分のクラスに戻っていった

俺も席に着き、息をもらす。


「ふぅ…… ほどほどに頑張りますか 」


ここまでは「俺」のことーー




ーー ここからは…… 「僕」が想う。


その行為、その思考、行動すらも造ったものだ。

完全に別の人間として、新しく厭らしい創造だ。

そうでもしないと本質や本心を暴かれるかもしれない。思想や計画が達成されない危険もある。


だから俺(僕)は自分を造った、数分前のやりとりも、登校途中の考え事も全て本心だ。だから「自分」の本心を暴かれることはない、だってそれも本物だから。

僕(俺)は"あれから"一つの、結論を得た。それはーー


世界は、人は少し余分なものを手に入れすぎた。故に失くすことを恐れる、そして今度は他者から奪う。だが、その余分を否定しない。たしかに余分だがそこには幸せがあったと思う、そこには求めても手に入らないものがあった。しかしそれ自体に、大きな誤りがある。


だからこそ、「自分」を含めた全ての負を消し去り、教えのある、学びのある"最初"にする。何か一つ、誰か一人でも残してはいけない…… 人間が人間を、肯定し続ける限りはな。


だが、否定させるのを残すわけじゃない…… それではまた、いつか繰り返す。残すのは○○だ。この目的の為なら俺は、全てを犠牲にできる。全てを背負っていく覚悟がある。



場所が変わっても、環境が変わっても、俺(僕)はどこまでいっても○○であり続ける。違うなーー



"そんな簡単に変わるわきゃねぇんだよぉ〜"

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