夜空の子
満天の星空。
足元にも、同じ景色が広がっている。
黒いパジャマ姿で、靴も履かず、白い素足は水面に反射した星空の上に立っていた。
私は気がつくとここにいて、四方をぐるりと見渡すと、ずーっとずーっと続く水平線の他には、全方向に散った星屑以外何も見つからなかった。
空には月がなくて、小さな小さな星々だけが、息を呑むほど美しくそこにあった。
狭いのか広いのかもわからない。
ただ、私を包む藍色の空と星屑以外は何も存在しない。
右とか左とか……何もわからない。
この場所にそんな概念は無い。
私が歩き出せば、爪先からは波紋が生まれて、足元のプラネタリウムははかなく滲んでしまうけれど、その波紋すらも優美だ。
どれくらい歩いたか……景色が変わらないので自分がさっきとどう違う場所に立っているかなんてわからない。
疲れなんて微塵も感じなかった。
何処までも歩いてゆける気がした。
時間も距離も無いこの世界を、永遠に歩いていたいとすら思った。
私はちらちらと瞬く星々が、まるで呼吸をしているみたいに見えて、
「私は今、この星たちと共に生きているわ!」
と思い切り叫んだ。
ハッと目を覚ますと、そこには見慣れた木目の天井が。
……なぁんだ、眠っていたのか。
蛍光塗料が塗ってある秒針は、夜中の三時四十分を指していた。
私は四畳半の和室の端っこで目を覚まして、再び眠りに着く。
星柄のカーテン、枕カバー、天井から吊るされた星型のインテリアの他にも、私の部屋の中は星でいっぱい。
机の上には雑誌の付録で着いてきたプラネタリウムが置いてある。
私はいつか、星屑の中を歩きたい。
今、夢に出てきたみたいな場所で、たったひとり、宇宙のロマンに浸りたいの。
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