星の国の少年
眠れない夜だった。
秋も深まってきた今日この頃、私は少し窓を開けて、吹き込んでくる冷たい風に凍えながら毛布に包まるのが大好き。
寒い中で毛布のふわふわを堪能するのって幸せでしょう?
それが好きなのよ。
でね、今夜も秋の夜長に肌寒さを感じながら枕元の本を読んでいたの。
いつも寝る前に三十分くらい読書をしてから眠りに着くのだけれど、今夜は本に栞を挟んで一時間が経つけどまったく眠くならない。
昼間と同じくらい目がパッチリしているわ。
明日は朝から学校がある。大嫌いな英語から、一日が始まるのよ。憂鬱だわ。
私はカーテンを開けて、窓枠に肘なんかつきながら、田園風景が広がる田舎道を眺めていた。
ただ、ぼんやりしてたの。
そしたら、視界の端っこに白いような黄色いような、とにかくきらきらした目立つ光がちらついた。
何かしら、と思って光の方を見るでしょ?
目を疑ったわ!
田んぼ道をよ! 全身に白い光を纏った男の子が歩いていたの。
なんていうのかしら……あの、ファンタジー小説に出てくるキャラクターたちが着ている洋服――トゥニカ!
そう、トゥニカ一枚だけを身に纏った小柄な少年が、夜空を見上げながら歩いていたの。裸足で。
彼の踵からは、歩くたびに光ったビーズみたいなものが沢山散って、畦道には一本の淡く光った線が、彼の通ってきたずっと向こうまで伸びていたわ。
夢でも見ているのかしら――
私は自分の頬を抓ってみた。
夢の中で頬を抓って「痛い!」って言う感覚とは違う。これは確実に現実の痛みだわ。
私は窓を全開にした。
網戸も開け放って、窓枠に手をついて身を乗り出す。
この家は平屋だから落ちたって死ぬことはないわ。ちょっと「いたた……」ってなるだけ。
ほの白く光った少年は、遠くに伸びた一本道の上で、ただ夜空を見上げたまま、足元にきらきらを散りばめて、遠くへ去っていった。
私は彼の姿が見えなくなるまで、淡く光り輝いた彼の後姿を眺めたわ。
あとにはきらきら光る一本の線だけが残っていた。
私はその後も眠らずに、窓越しに星屑の散る藍色の空を見上げて、
「あの子は星の国に住んでいる男の子なのかもしれない」なんて、十四歳にもなって少々子どもっぽいかな、って思いながら、気がついたらいつの間にか眠っていた。
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