エッセイ1『言葉というもの』

 言葉というものはとても不思議なものです。

 その用いかたによって人を傷つけることもあれば、逆に人を励まし勇気づけることもできます。

 特に、その言葉を吐く側の経験や知識が伴ったものである場合、言葉は何倍もの重みをもちます。

 ゆえに、言葉は凶器でもあり、良薬でもある。

 要は言葉を投げかける人の心ひとつでどのようにでもなるのですね。


 

 これまで創作について、いろんなところでいろんな言葉を発してきました。

 メジャーデビューとか出版するとかは考えていなかったので本当に素人書き、趣味書きのレベルなのですが、それでも他の作者様からすれば「長い」と言われるような年月にわたって創作を続けてきました。自分で言うのはややおかしなことかも知れませんが、創作という行為に限っていえばその分「経験」は多いのかな、と思っています。

 この経験に基づいて述べる言葉は、受け取った人に大なり小なりの影響を与えることがあります。

 自分ではあまり意識していなかったのですが、多くの作者様とのやり取りの中で、それを感じるようになりました。広く外へ向かって発信するツールが普及している時代ですので、自分で思っている以上に他の人の目に触れているのですね。

 そうすると、発する言葉の内容によっては誰かを批判したり傷つけたり、あるいは意欲を削いでしまうことにつながってしまいます。蓄積された経験値は、ときに他の人の在り方に対する違和感を、自己の内に容赦なく喚起します。その違和感を当たり前のように、あちこちで言葉に出してきました。そうすることが誤りを正すことであり、道理であると思っていました。

 しかしながら、経験に基づく言葉であっても、それを持たざる人にとっては価値を見出しにくいものです。かえってプレッシャーやストレスを与え、結果としてモチベーションを削ぎ落してしまう。

 仕事でもそうですね。

 何十年のベテラン社員が「これはこうするものなんだ!」って新人社員に頭ごなしに言ったとしても、言われたほうは「はあ」としか答えようがない。大切なことは「これはこうしてこうしないとこうなってしまう。だから、こうしないといけない」と、経験を踏まえてわかりやすく、噛み砕いて伝えることなんです。

 今まで自分が発してきた言葉は、単に経験と知識の押し付けなのかな、と思いました。

 そのために、どこかにいる見知らぬ作者様の意欲を失わせてしまったとしたら、それはとてもいけないことです。こんなことは、あってはならないのです。

 そこで、じっと考えてみました。

 誤りを正すのでも上とか前から力づくで引っ張るのでもなく、後ろからそっと背中を押してあげること。

 

「どうしようかな、やろうかな、やめようかな」

「これでいいのだろうか? やってみたいけど、ちょっと自信がない」


 そういう時に「大丈夫ですよ。安心してやってみてはいかがですか?」って言われたならば、それは自信と意欲の原動力になりはしないでしょうか。人によって大きい小さいの差異はあるでしょうけれども。

 百人、千人の背中を押してあげられたらそれが一番いいことなのでしょうが、そういう大それたことはさておきます。

 たった一人、どこかにいるたった一人の創作が好きな人の気持ちをほんのちょっとだけでも前向きにさせてあげられることが出来たら、言葉は良い意味で活用されたことになると思うのです。

 そういう言葉を、ほんのわずかではありますが綴っていきたいと思います。

 この世界のどこかにいる、私の見知らぬ一人の作者様に届くように。

 創作をしたいと思っているどなたかに「よし、やろう!」って思っていただけるように。

 笑われてもいいと思います。批判する方がいたとしても、それはそれ。

 私は間違ったことはしていないと確信します。

 他の人を支えてあげたいって思うことに、誤りはあるのでしょうか。自己満足という批判はあるかも知れませんが、自分も他者も一緒に前に進めるなら、その自己満足は決して悪いものではないという気がします。

 誰かの力になるような文章を書くことができたとき、私が創作(小説、お絵かき含め)を続けてきた本当の意味が完成するものと信じています。



 言葉は、人と人をつなぎ、共に前を向いて進みゆくためにある。

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