夜のはじまり2
マウナを残し、アータ博士が部屋を出る。
アータ博士が満月の中へ戻ると、そこには、女王の椅子に座ったイーシャ姫と、ジュナがいた。
ジュナも、リューのように涙に濡れていた。
博士が恭しく、イーシャ姫の頭に、ティアラをのせるように銀色の環をはめる。
そして、椅子の背もたれの上に天球儀を置くと、天球儀から光の糸の束が現れ、イーシャ姫の頭の環に繋がった。
同時に地下では、床を這っていた管という管が、まるで生きているかのようにぐにゃぐにゃと蠢いて、コルボの身体にまとわりついていった。
コルボは苦痛に顔を歪めている。
かなりの痛みや苦しみに耐えいているように見えた。
城の外では、リグ王太子妃を先頭に、何人もの人間が、塔の上空に現れた巨大な魔法円に向かって両手を掲げ、何かを唱えていた。
街を取り囲む森の木々から、たくさんの鳥たちが、一斉に逃げ出すかのように飛び立って行った。
やがて、満月の頂上から、真っ白な光の矢が、尾を引いて真上に走った。
巨大な魔法円の中心を、光の矢が貫いたと思った次の瞬間。
光の矢が貫いたその中心から、輝く幾何学模様が流線型を描いて浮かび上がった。
それは王都を包み込むように、徐々に横へ、下へと広がり、街をすっぽりと包んで大地に到達した。
元々暗かった街を、漆黒の闇が包んだ。
城の周りでは、何かを唱えていた人たちが、膝を折って泣き崩れていた。
満月の中では、イーシャ姫は既に虚ろな瞳で虚空を見つめる、女王となっていた。
女王の前には、ジュナが跪づいていた。
その光景は、静かで、悲しげで、神々しかった。
地下では、コルボが椅子の上で歯を食い縛り、必死に苦痛に耐えていた。
マウナは、冷たい瞳でコルボを見下ろしていたが、やがて彼を残して部屋を出ていった。
それから、どれくらい後の光景だろうか。
次に映し出されたのは、女王の前に親衛隊の隊員が全員揃って整列しているところだった。
ジウ達には、彼らはもはや親衛隊ではなく、守護者にしか見えなかった。
彼らは一人一人、女王の椅子の横にあるテーブルに置かれた綺麗な装丁の本に、サインをしていく。
ユキが持ってきた本だ。
サインをした者の兜には、魔法円が一瞬浮かび上がってすぐに消えた。
サインをしたことで、彼らは守護者となり、塔に捧げられていくのだ。
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