眩しい夢

 ジウとアヤは目線を合わせなかった。少し気まずい空気になった。


「知らなかったなぁ」と呑気な声を上げているシノに、ユキがすかさず声をかけた。


「シノは? どんな夢を見たの?」


 シノは、びくんと反応して、何故か照れくさそうにした。


「えっと、俺はね、今と同じくらいか、もう少し年下な感じでえーっと……そう、リューって名乗ってた。ほんとの名前じゃなかったけど」

 そこまで言って、ぐず

りと鼻をならした。また涙が出てきたらしい。それを袖でゴシゴシと拭いて、シノは話を続けた。


「すっごくね、眩しいところにいたんだよ。天井がすっごく高くって、真っ青で、白いモコモコしたのが浮いてて、とっても明るくって、とっても綺麗だった。硝子森と違って、満月の塔の周りにある大樹みたいなのがいっぱいあって、ゆらゆら揺れて……さわさわ音がして……暖かくて……あんなに素敵な場所見たことない」


 三人はシノの言葉に首を傾げた。


「青い天井?」

「まぶしい?」


 ユキとジウが同時に言う。


「でね、俺、大好きな人がいたんだ。兄さんていうか、お父さんみたいな人……。その人の力になりたくて頑張ってるんだけど、その人の本当の家族になりたくて……でも、ダメなんだ。そんなこと、願っちゃ」


 そこまで話したシノはついにしゃくり上げて、涙をボロボロとこぼした。

 ユキがそっとシノの背中を撫でた。


「大丈夫?」

「うん、ありがと。あの人、コルボ様……真っ黒な髪の……」


 そう言うと、シノはハッと顔を上げた。

 大きな瞳から、最後の涙が一粒こぼれ落ちた。


「あの人……そう! あの人だった!」


 ジウ達は急にシノの様子が一変したので驚いた。

 アヤが「落ち着け」と困惑した声で言ったが、シノは耳に入らないようで、あわあわと手をバタバタさせながら続ける。


「あの人だよ! ほら、砂嵐のところで会った、真っ黒な服の人!」

「何だって?」

 ジウ達は揃って驚きの声を上げた。

「間違いないのか?」

 アヤが聞くと、シノは力強く頷いた。


「そう、間違いないよ。今、思い出したんだけど、気を失う前、みんなが先に倒れちゃった後、通路の先に、コルボ様――あの、黒い人が立ってたんだ。それで、黒い羽根がたあっくさん飛んできて、僕たち埋まっちゃったんだよ」

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