二人が見た夢
四人は、先ほどの動く本棚のあった部屋に戻り、赤い布が置かれたテーブルを取り囲むようにして立っていた。
満月の塔のふもとに出た直後、守護者の姿が見えたので、急いで戻ったのだ。
もちろん、出口の扉も閉めてきたし、本棚のカラクリも元に戻した。
ひとまず追いかけてくる様子もないので、自分たちがここにいると、まだ知られていないと判断し、四人がそれぞれ見た夢について話し合うことにした。
「俺は、城の門番をしていた。満月がてっぺんにない状態の、満月の塔がある、巨大な建物だった」
アヤがテーブルの上の布を見つめたまま、話し始めた。
アヤの言う「満月がない満月の塔」という表現は、何だかおかしな響きだったが、ジウも同じものを見ていたので理解できた。
「塔にはお姫様がいて、それも絵本のお姫様にそっくりの人だった」
「俺も見た」
ジウが言うと、アヤはハッとして顔を上げて、ジウのライトグリーンの瞳をじっと見つめた。そして、困惑したような顔で言った。
「アンタと、夢で、会ったか」
ジウはアヤを見つめ返して「ああ」と答えた。
「会った。俺は、今よりずっと年食ったおっさんで、あの、女守護者にそっくりな騎士に、アータ博士って呼ばれてた」
二人は見つめ合って、同時に女の名を口にした。
「――ジュナ」
二人は、互いの見た夢の景色が同じだったことを確信し、驚きながらもどこか納得していた。
アヤが俯いて続きを話し始めた。
「ジュナ。そう。俺は、あの人の部下だった。尊敬していた。強くて、凛々しくて……」
「マウナ。マウナ・アルハ……だっけ?」
ジウが夢の中で聞いた、若い騎士の名前を言うと、アヤは、ジウの目を見て「ああ」と答えた。
「あれ、アルハって、アヤの家名だよね?」
シノが言うと、アヤは無言で頷いた。
ジウ・アータ
アヤ・アルハ
ユキ・キラナ
シノ・ハリ
ジウは頭の中で四人の名前を、家名付きで並べてみた。
ジウのアータ家と、アヤのアルハ家の名が夢の中に出てきたことになる。
「アヤとジウのご先祖様の夢だったってこと?」
シノが言う。ジウは、ふと夢の中の「アルハ家」が貴族のような扱いだったことを思い出した。
アヤは平民だ。だが、口に出すのが何となく躊躇われた。
貴族だ、平民だ、そんなことを考えるのも、もう嫌だったのだ。
すると、アヤは察したのか、俯いて口を開いた。
「うちは、じいさんのじいさんの代あたりまでは貴族だったんだ。没落して平民になった家なんだよ。だから、先祖が貴族でも、おかしくない」
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