疾駆する白刃

 ジュナは街を駆けていた。

 こんなに、満月が明るい時間に街の中を全力で駆けたのは、いつ以来か。

 街中の市民たちは、見慣れぬ守護者の姿に驚いて、皆道の端に避けて固まっている。

 ジュナはあっと言う間に居住区を抜け、硝子森を抜け、扉のある場所に辿り着いた。

 眼前には、いつもと変わらぬ砂嵐が吹き荒れている。

 ジュナは地面にしゃがみこみ、手近な硝子の枝の欠片で地面に小さな魔法円を描いた。

 久々に描く紋。自分を表す紋だ。

 描き終えると立ち上がり、大きな槍の柄を魔法円のすぐ手前に突き立てた。

 すると、魔法円が青白く光り、光の輪となり浮かび上がった。

 輪は、ジュナの槍の刃先まで昇り、切っ先で大きく広がった。

 その切っ先を、砂嵐の方へ向けると、光の輪は、槍から放たれ一直線に砂嵐を貫いていく。

 光の輪は扉まで到達し、人が一人通れるくらいの光のトンネルとなった。

 一切の迷いなく走り出したジュナは、トンネルの先の扉を開き、中に入った。

 直後、ジュナを追って三人の守護者が砂嵐の前に辿り着いた。

 光のトンネルは半分消えかかっていたが、三人は構わずジュナの後を追った。

 間もなく扉に着くというところで、砂嵐が流れ始めた。

 先頭を行く一人が扉を開き、後続の二人を先に中へ入れた、自身も入ろうとした時、光のトンネルが完全に掻き消えてしまった。

 砂嵐が勢いを取り戻し始めると、扉を開けているのも辛くなった。

 それでも苦しむそぶりもなく、中へ向かう守護者が扉をくぐる瞬間、砂嵐は完全に元の強さに戻った。

 かろうじて中に入ったものの、一瞬とはいえ砂嵐にさらされた兜に僅かにヒビが入ってしまった。

 扉が完全に閉まると、彼らは何事もなかったかのように通路を奥へと駆けだした。

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