にわとりが先か、たまごが先か

 これでよし。

 ここまで書けば、十分だろう。

 

 あとは、ここに書いたことが本当になるのを待てばいいだけだ。

 ここ某県某市の某所で、探偵に声をかけられるのをただ待てばいい。



 そうすれば、すべてがうまくいく。


 私の困りごとが、すべて解消される。


 恋人の死についても、すべて。



 しかし、私も幸運だった。

 まさか『書きこまれたことが本当になるサイト』なんてものがあるだなんて。

 「都市伝説の企画に参加すること」が条件だったが、なにも問題はなかった。


 ウワサを耳にしたときは半信はんしん半疑はんぎだったのだが、調べていくうちに、本物だと確信するようになっていた。



 特に『ある作者の死』と『ある管理者の死』の話が決定的だった。



 だから、今回私の書いた『都市伝説探偵 vs 【#僕の私の都市伝説】』にも、その『作者と管理者の死の話』を組みこんでしまっているのだった。


 しかも、探偵の名前を、その死んだ作者の文章から拝借はいしゃくする始末しまつである。

 探偵の名前「時計くろく鍵牢ろくろう」とは、その作者の死に関係する文章のをもじってつけた名前だった。

 そして、その性格についても、その文章にでてくる「あいつ」という人間を意識したデザインになっていた。


 どこまでも、その文章に影響を受けてしまっている状態だった。



 まあ、書いてしまったものは仕方がない。

 そもそも、なのだから、書いたところで、なにも問題はないはずだ。


 だから、心配はいらない。

 すべてがうまくいくはずなんだ。




「突然のお声がけで申し訳ありません。私は、時計鍵牢というものでして、探偵をしております」


 きた。

 私が書いたとおりの台詞だ。


「今ちょっと忙しいので」


「そうですか……それは残念です」


「え、あの、ちょっと待ってください、あれ? あきらめちゃうんですか?」


「へ? ああ、もしかして、私のことをご存知なのでしょうか?」


「ええ、まあ、すこしだけ」


「それは申し訳ないことをしました。

 実はですね、つい最近、とある方に失礼なことをしてしまいましてね。


 私のこの【都市伝説の嗅覚】に導かれるまま、とある方にお声をかけたのですが、『私はひとりでなんでもできるんだから』と怒鳴どなられてしまいましてね。


 いくら言葉をつくしても、まったく聞く耳をもっていただけなくて。

 さすがの私もあきらめるしかなかったのですが、あらためて考えてみたところ、ふと思いいたったのですよ。



 その方は、ただ『』と勘違かんちがいされていただけなのではないかと。



 普通の人からすれば、都市伝説なんて、から聞いた、ただのウワサにすぎませんからね」

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都市伝説探偵 vs 【#僕の私の都市伝説】 〇〇〇〇 @OO_OO

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