都市伝説探偵 vs 【#僕の私の都市伝説】

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都市伝説探偵 vs 【#僕の私の都市伝説】

「突然のお声がけで申し訳ありません。私は、時計くろく鍵牢ろくろうというものでして、探偵をしております」


 某県ぼうけん某市ぼうし某所ぼうしょにて、私は時計鍵牢という男に出会った。

 出会いがしらに名刺を差し出され、自己紹介までされてしまった。


「今ちょっと忙しいので」


 そう言って、くるりときびすを返したが、その男はすかさず回りこんできて、私に名刺を押しつけてくる。


「すぐに済みますから」


「結構です」


「失礼ですが、あなたは今、なにかで困っていませんか?」


「たいていの人は、つねになにかで困っています。迷惑です」


「あなたは今、困っていませんか?」


 その言葉に、私は思わず反応してしまった。

 その男の言うとおり、私は大切な人を、、失ってしまったばかりだった。


「その困りごと、私が解決してさしあげます」




 ■ ■ ■




「つまり、あなたの恋人は、その『書きこまれたことが本当になるサイト』によって、死んでしまったと」


「はい。信じられないかもしれませんが」


 私は、つい先日のできごとを、包み隠さず探偵に伝えていた。

 警察はまともにとりあってくれず、家族からもぞんざいにあつかわれてきた。

 もう他に頼るあてもなく、どうしようもなくなっていたからだった。


「大丈夫ですよ、私は信じます。お聞きした感触からですと、それは十中八九、都市伝説関係でしょうね。私のこの【都市伝説の嗅覚きゅうかく】もそう言っています」


 探偵は鼻をひくつかせながら、得意げな顔をする。


「ではまず、そのサイトのことを調べてみましょうか」




 ■ ■ ■




 私たちは、あの手この手を使い、そのサイトと都市伝説のことを調べた。

 そして、恋人の死につながりそうないくつかの文章を発見していた。


「どうやら、あなたの恋人は、あるはずのない文章を目にしてしまったせいで、命を落とされたようですね」


 文章を要約すると、こうだ。


 ある人物が、『書きこまれたことが本当になるサイト』を使った完全犯罪を計画していた。

 その人物は、自分を「」相手を殺そうと考えていたのだが、いろいろあって、最終的に自分自身を殺すハメになってしまった。


 本来ならばそれだけで終わる話だったのだが、その人物は「次に書く文章はもっとすごい」という書きこみも、そこに残してしまっていた。


「つまり、『自分を殺す』ことと『次の文章を書く』ことが、どちらも現実になってしまっているということですか」


「そのとおりです。しかも『次の文章』には、『自分を殺す』以上の『すごいこと』が書かれているはずなんです。あなたの恋人のことを考えれば、おそらくそれは『見るだけ』で発動する『見たもの』を標的とした文章なのでしょうね」


 それは確かに『自分を殺す』以上の『すごいこと』を引き起こせそうな文章だ。


 しかも、それを書いた人物――いや、は、すでにこの世にいないのだ。まるで自動書記のように、肉体もないままに、『次の文章』をつづっているのだろう。


「まるで呪いのようですね」


「ええ、都市伝説の中には、そういうものもたくさんありますからね」


「でも、どうすればいいんでしょう。とめようにも、もう書いている人間はこの世にいません。サイトの管理者にかけあっても信じてもらえないでしょうし、削除したところで、また新しく書かれるだけでしょう」


「そんなもの、決まっているじゃないですか。私たちも、この『書きこまれたことが本当になるサイト』を利用すればいいんですよ」


 そう言って探偵は、そのサイトに新しい書きこみを始めた。




 探偵の書いた文章は、

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