2017-05-12
「あいよー」
ぴんぽん、と鳴ったドアベルに返事をした。
魚倉真紀は、半分くらい魚である。
ここの住人に隠す気はさらさらないが、たぶんまだ知られていないだろうことだった。あ、でも前に大家さんに家まで運ばれた時、エラのあたりに手があったような気がする。
まあいいや。
マキの取り柄は大雑把なところだった。
ざばんと風呂の中から立ち上がり、バスタオルを取り、わざわざ一度それを湯の中に浸してから身体に巻き付けた。胸を隠し、エラが隠れていることを確認する。気にはしないが一応隠す。
まーそれが礼儀だからねえ。
マキはのんびりと玄関に向かった。
「あいよ、どちらさん」
マキがそうして扉を開けようとする前に、声がかかった。こんなにせっかちな人はいたっけか。
「入っても、いいですか。」
「いいから開けてんじゃない、ちょっと待ちな。」
あ、とそこで気付いたマキ。また扉がほんのりと開いていた。さっきからすうすうと風が寒いと思っていたんだ。よく考えたらもうちょっと服を着てきた方がよかったかもしれない。
「あい、どうしたい。」
がちゃんと開けた扉の向こうにいたのは、あまり顔なじみのない相手だった。寝ぼけてでもいるのだろうか、ボタンを掛け違えたパーカーに寝癖頭のつむじが見える。
「どちらさんだい」
マキの友人にはこのくらいのサイズのひとはいなかった気がする。水谷は大きいし、外川も大きい。アケミはアケミで女だし。
訪ねてきた人物はぎょっとしたように固まっている。どうしようかね。
「ちっと寒いんだ、用があるなら……、」
「し、しつれい、しますっ!」
あらま、どこか行っちゃったよ。
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