第2話許嫁②

………


さくに裏切られた私は、車に乗って約10分が経った……


気まずすぎる……

寝たフリをしたら?と思うかもしれないけど、すでに1回もうやったことあるのよね。

その時は、すぐにバレて恥ずかしかったから、もう二度とやらないと心に決めたの。

朔、どうしてついて来てくれなかったのよ!

八つ当たりのような気持ちのまま、とりあえず、苦肉の策で窓の外を眺めてみる。


あぁ、ここにもたくさんいるわね。

人を食べようとしているものや、人と関わらないように路地にひっそりと佇んでいるものもいる。

あいつらは、人ではないし人にはなれない存在。

と私たち見える人は、そう呼んでいる。


全ての人が見える訳では無いけれど、物の怪たちは、見えようと見えまいと人を襲うことがある。

そんな時のために、人が物の怪に対抗しようと結成されたのが退魔師である。

退魔師は、物の怪を退魔し、人を守るのが仕事だ。


一応うちの家系は、代々天皇家に仕える退魔師で実はすっごい格式の高い家らしい。

私は、10年前の6歳の頃この本家に引き取られてきたから、どれだけ立場が上なのかよく分からないけど。

家が立派だから、お金持ちなのねーとかいう認識しかない。


両親が生きていた頃は、名前も聞いたことがないような親戚だったので、きっと母は縁を切っていたのだと思う。

だって、私よりもずっと自由を好きな人だっだから、息苦しいこの場所が嫌だったんだと思う。

立場が高ければ高いほど足元をすくわれないように注意する必要があるからね。


物の怪というものは存在するだけで悪

叔父さんは、そういう考え方だ。

だから、全ての物の怪を退魔させようとしている。

でも、私の母親は、全ての物の怪を退魔する必要はなく、本当に悪い奴だけを退魔しなさいと言っていたわね。

きっとこの部分も、母が縁を切る理由のひとつにもなっているでしょうね。


私は、母親の考え方に賛成している。

確かに悪い物の怪もいるけれど、朔ような人に害を与えないかわいい物の怪もいるから。


だから、叔父さんとの修行は、苦痛でしかない……

私は物の怪に、特別狙われやすいから自分自身を守るためでもあるんだけれど、全ての物の怪を退魔する。

それは、私にとって少なからずとも、自分を否定するものでもあるから。

そして、それは、叔父さんが縁を切っていた母の娘である私を引き取った理由にもつながるのでしょうね。



ていうか、さっきから叔父さん本当に一言も喋らないんだけど……生きてるのかしら?

思い切って喋ってみますか。


「叔父さん、あとどれくらいでつきますか?」

「あと、少しだ。咲良さくらは、余計なことを考えず向こうの言う通りにしていればいい。」

「はい。」


会話終了

撃沈したわね。


そう言えば、私の許嫁の名前は、せつと言うらしい。名前だけ聞いたら、色の白い美少年っていうイメージだけれど、想像と違っていたらダメージがあるから考えないでおくべきかしら……

とか、1人で悶々と考え込んでいると


「ついたぞ。降りる準備をしろ。」


と声をかけられたので思わず背筋をピシッと伸ばして座り直す。

叔父さんがインターホンを押すと、門が自動で開いて私達は中へと入っていく。

それにしても、大きいお家だわ。

叔父さんの家より大きいんじゃないかしら。

私の好きな昔ながらの日本屋敷みたいな感じで、庭も広い。

キョロキョロしながら車から降りて私と叔父さんは、執事の人に部屋の前まで案内される。



いよいよ、私の許嫁とのご対面だ。


襖を開けて、廊下に三つ指を立てて挨拶をする。


「安倍 咲良あべさくらと申します。これから、よろしくお願いします。」


私の名字を聞いたらんっ?と思う人もいるかもしれないけれど、私は、あの安倍晴明の子孫。

そう、かの有名な安倍晴明。

でも、私はそんなことよりももっと衝撃的なことに気づく。


顔を上げると奥の座敷に……



人に化けたが座っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る