第1話 許嫁①

 パチッと目が覚めて私は、傍らで寝ているさくを起こさないようにして、そーっと布団から抜け出した。朝が弱い私が朔よりも早く起きるなんて珍しいこともあるものだと自分でも思いながら.........

 でも、今日は楽しみなことがあって昨日の夜からワクワクしていたの!


「んー、いい匂いー。お腹空いたー」

咲良さくらちゃん今日は早起きなのね。」


 クスッと笑って私の叔母の結衣ゆいさんが言った。


「だって、今日は待ちに待ったあの日ですよ!夜もあまり眠れなかったんですから。」

「そうね、だいぶ前から楽しみにしていたものね。」


 そう、今日は私の夫となる人に初めて会う日なのだ。

 ようは、幼い頃から決まっているの許嫁。

 普通の感覚なら、高校生の時に夫が決まるとか束縛されてるように感じて嫌かもしれないけれど、叔父さんの家は特殊だし、何度か手紙とかでやり取りしてるからね。

 特に不安とかはないけど……


「結衣さんは、私の許嫁にあったことあるんですよね?」

「えぇ、そうよ。とても優しい人だったわ。何も不安に思うことはないわよ。」

「不安には、思ってないんですけど……」


 心のうちにある葛藤を言おうした瞬間、襖が開いて陽一よういちおじさんが入ってきた。


「おはようございます、あなた。」

「おはようございます。」


 私この人ほんと嫌いなんだけど……関わりたくないけれど、幼い頃病気で両親が亡くなってから、私を引き取って、育ててくれた人なのよね。

 だから、いい人なのだろうけど……


「あぁ、おはよう。咲良、今日のことは……分かっているな。9時に家を出るから、それまでに準備しておくように。」

「はい、分かりました。」

 今は、7時半。


 許嫁との約束は10時だったはず。

 余裕で間に合うわね。とか思いながら、ご飯を食べて、自分の部屋に登ろうとした時。


「咲良、今日の修行は取りやめとする。だが、自己練習はしておくように。」

「はい。」


 やったー!修行する日がないとか何年ぶりだろう。

 顔がニヤけるのを我慢してとりあえず廊下に出る。

 あ、ちなみに修行っていうのは、花嫁修業とかそういうかわいいのじゃなくて、物の怪を倒す退魔師としての修行だ。

 私はこれが大っ嫌いで、叔父さんの考えには反対しているけれどこういう家系に生まれたからにはしょうが無いと思ってもいる。


 部屋に戻ると朔がまだ、寝ていた。ほんとに、朝が弱いんだから。


「朔、早く起きなさい!朝ごはん作ってくれてたわよ!」

「うるさいな。物の怪の活動時間は、夜だって知ってるだろ。まだ、朝だぞ。」

「いい加減、その言い訳やめたら?何年人として暮らしてるのよ。」

「しょうが無いだろう。昨日はお前の叔父さんにすごいこき使われたんだから、今日ぐらい寝かせろよ。」


 何こいつ……ダメな奴だ。


「え、うそっ。朔今日ついてきてくれないの?」


 さっきまでムカついてたけど、朔がついてきてくる気がないことに気づいた私は、無性に慌ててしまう。


「はあ?今日は、会うだけだろ。別について行ってもすることないし、寝てる方が楽だしな。」

「えー、うそでしょ!てっきりついてきてくれると思ってたのにー!あの叔父さんと、車の中で二人きりとか耐えらんない!」

「そこかよ!許嫁と会うこと気にしてんのかと思ったわ!」


 いちいちツッコミを入れるところこいつもまだ余裕があるわね。とか思ってると部屋の外から、結衣さんに呼ばれてしまった。


「ほれ、早く行ってこいよ。」


 ううっ、どうして1人だけ……朔の裏切り者ー!

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