第5条 「愚かな賢者」

「外典を持つ『愚かな賢者』よ」


 はあ?愚か?どこがよ!確かに単位はいつでも、「オン・ザ・ギリギリライン」

 だけど……愚かじゃないよ!


  ……利口でもないけど。


 「無知の……?」


 あ、これ知ってる。教養の哲学科目で、宿題に出たやつ。


「知!!」

 

  どーよ。白洲七瀬、やればできる!そのとき、不思議な唐草模様が紙切れに浮かび上がった。私は息をのむ。なに……これ。


 「疑わしきは……?」


 ……ごめんなさい、もう威張りません。


 「もう一度問う。疑わしきは……?」


 ああもう、なんだったかなあ。こないだ聞いたのに、法学に全く関心がない私の右脳は絶賛休養中だったので、記憶は無。皆無だ。文系の理論に従えば、無から有を生み出す裏ワザは、ヤマ勘である。


 「疑わしいんだったら、罰するよね……疑わしきは、罰せよ!」


 当たるかなあ。こないだ人生で初めて買った宝くじの一等よりは当たりそう。買わねば当たらぬ、答えねば当たらぬ、である。

 

 あの紙切れに、唐草模様が、次々に浮かびあがる。


「六法全書……聖なる書物。契約はなされた。ゆけ。外典を扱い、世界を救え」


 そのとき、手元に置いていた法律辞典が光りだした。ネイビーの表紙は黒っぽく光り、白いページは風もないのにぱらぱらめくられる。そして、すべての法律用語が消えて、白紙の本になった。


 なんなのこれ……。


「ようこそ、『愚かな賢者』、ナナ。さあ、ヨモツヒラサカへ行くのです」

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