第10話 絞ってハニー

 夜の寝室に勢ぞろいする五人のメイドたち。うち二人は、最初の朝にルミナスを起こしに来たピンクと水色の髪の毛コンビだ。残りは緑に赤に黒。

 この五人が二人一組でローテーションを組み、ルミナスの世話をしているらしい。一人足りない分、ペアも組替わる

 ……のだが。


「「「「「よろしくお願いします」」」」」


 綺麗にハモッた挨拶だが……。

「おいルミナス。俺は何をお願いされてるんだ?」

 相変わらずのドヤ顔に向かって聞いてみるが、答えは大体予想できる。

「言うまでもなかろう? 妾一人では、どんなに気張っても、お主の三日分の魔力ほどしか与えられんからの。しかも、毎日では身が持たぬ。日々、鍛錬を続けながら溜めこむには、さらにそれ以上が必要じゃ」

 そう言いながら、ルミナスはメイド達を見回す。

「お主の身体のアダマンタイトじゃがな。もう充分、妾の魔力に馴染んでおるからの。そろそろ頃合いじゃ。今夜は急だったから五人じゃが、明日からはもっと増やすつもりじゃ」

 前半の「馴染む」てのがよくわからないが……。

 ……おいおい、ひょっとして今夜は六回戦まであるのか?


 メイドたちの見た目は十代後半と言ったところ。日本なら女子高生だ。もちろん、実際の年齢は全く当てにならないが、外見は美少女ぞろいだ。おまけに、ロリ体系のルミナスとは違い、ちゃんと出ているべきところは出ている。

 前世なら願ってもない幸せだ。まさにハーレム。

 しかし、このゴーレムの身体には残念ながら性欲と言うものがない。毎晩ルミナスの相手はしているが、どちらかと言うと役目を果たすという感じが強い。

 そこへ来て五人が追加となると、一晩中かかりそうだ。もちろん、この身体は睡眠をとる必要がないが、夜の読書タイムが無くなるのは辛い。


 この世界は、余りにも分らない事だらけだ。魔王少女の夜の相手だけで終るわけにはいかない。

 「好奇心は猫を殺す」と言うが、「知識は自由をもたらす」とも言う。だから、せめて本から得られる知識くらいは、「なるはや」でモノにしたいのだ。


 だが、その俺の願いは、ルミナスには通じないようだ。


「さて、さくさくやってたもれ! 夜が明けてしまうぞよ」

 言うなり、ピンク髪メイドに命じた。最初の朝に担当だった一人。

「まずはマルフィナじゃ」

「はい! 喜んで!」

 どこの居酒屋だよ!

 ……とのツッコミは口にしなかった。確実にスベルからな。

 マルフィナと呼ばれたメイドは、壁に歩み寄るとこちらに背を向け、メイド服のスカートを一気にたくしあげた。そして、壁に手を着いて、尻をこちらに突きだす。


 ノーパンだ。そして、尾てい骨のあたりからは黒くて細い尻尾。


「ほれ、ちょうどよく潤っておるぞよ」

「ああっ! ま、魔王様!」

 ルミナスが手ずからくつろげた場所は、準備万端整っていた。

「ちょ……立ったままかよ?」

「妾のしとねを使わすわけにはいくまい」

 そんなものか。


 ……そして、俺には拒否権が無い。


 ずぶり。

「はぅ!」

 それだけでマルフィナは身体を逸らせ震わせた。

「では、唱えるのじゃ。『魔力吸引』」

「なんだそりゃ?」

 とりあえず、義務感でピストン運動をしながら聞き返す。

「魔力を奪う呪命ぞよ。面倒じゃからお主が自分で使えるようにして置いたのじゃ」

 昼間、一緒に組み込んだのか。

「妾の愛しのソレを、大盤振る舞いするつもりはないのじゃ。さっさと魔力を吸い取るがよい」

 減るもんじゃなし、ケチるなよ。

 そうは思ったが、時短出来るなら助かる。


『魔力吸引』


「ヒギィィィ!」

 一声叫ぶと、マルフィナは激しく全身を痙攣さた。そして、魔力が俺の中に流れ込んで来る。

 流入が止まると、メイドは意識を失ってその場にへたり込んだ。

 ……ルミナスの場合とは違いすぎる。

「大丈夫か? 何だか苦しそうだったが」

「強制的に魔力を奪われるのは、かなりキツイじゃろな」

 そんなやり取りの間にマルフィナは意識を取り戻し、ヨロヨロと身体を起こした。


 なんだか、痛々しすぎる。


 だが、ルミナスは命じた。

「次じゃ。エルリア!」

「はい! 喜んで!」

 水色髪のメイドだ。

「……その返事って、決まり事なのか?」


 メイド達はそれでも、この役目に積極的だった。俺も、言葉通りに喜んでくれるならと、ピストン運動を多めにしようとするのだが……。

 ほんの数往復で、ルミナスが『魔力吸引』で終わらせてしまう。しかも、失神するまで搾り取るとは。

 ちょっと、これでは彼女たちが可哀想だ。


 息も絶え絶えでメイドたちが退出すると、ルミナスがベッドから呼びかけて来た。

「ほれ、次は妾じゃ。待ちかねたぞよ」

「ちょっと待ってくれ」

 視線を右上に。魔力ゲージを見ると、赤が周り切っていない。

「五人で四分の三ほどか……」

 思ったほど増えていない。

「仕方がなかろう。普通の魔族ではそんなもんじゃ」

 ルミナスが別格と言うことか。魔王だけのことはあるな。


『魔力吸引』

「ぎゃあああぁぁ!」


 挿入直後に唱えてみたら、一気にゲージが黄色ゾーンになった。

 さすがはルミナス。魔王だけのことはある。

「普通に、普通にやってたもれ……優しくしてたもれ……」

「俺は、女性は平等に扱う主義だ」

 と言うのは口実だ。本音は、さっさと済ませて読書三昧したいだけ……なんだが。

 メイドたちが可哀想だったのもある。


『魔力吸引』

「ひぎいぃぃぃ!」


 遂に、ルミナスはオイオイと泣き出した。

 流石に可哀想か。

「わかった。じゃあ、最後はサービスしてやる。その代り明日からは、もう少しメイドたちの負担が軽くなるようにしてくれ」

「あうあう……そうする。約束するのじゃ……」

「よし、良い子だ」


 結果的に、魔力は四日分ほど溜まった。

 雑巾と魔王は、良く絞るに限る。


 そして、翌朝。

 ルミナスは思った通り起きられず、俺は一人で中庭で待つドノバンのところに行った。


「おう、来たなゴウラ。今日からは武器も使うぞ」

 オーガ騎士が手にするのは、初日に持っていたハルバードだった。

 そして、今日も鍛錬が始まる。

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