第13話『ダダイストと永遠』

熱狂がおちついてしまった後、結局は何事も無かったと考えるのが人間の合理性だとすると、熱狂を永遠に続けているわけにはいかないのかと、そこに目を向けた一部のダダイストたちは、かなりひねくれたやりかたで様々なことを繰り返し試みました。

このこと自体、熱を無くし、秘密が必要とされなくなっていく世界の中で、新たに発見された世界の秘密だったかもしれません。

しかし、一瞬の全てが永遠につながることはなく、そこに残される記録は、たとえ完全なものだったとしても、完全な記録という別の何かでした。

マックス・エルンストの自伝メモの中に、七月のある日に行われた、何か魔術めいた儀式とも実験的な行為ともつかないものについての記録があります。エルンスト自身が何かをしたというものではなく、当時交流のあったケルンの芸術家の試みについて、印象に残った事柄についてのメモです。そこでエルンストは、力と力が接触する瞬間が永遠に通じる可能性について感じ取った様でした。

このメモだけでは、当時行われたことの詳細はわかりませんし、マックス・エルンストが感じたことの他にはななんの手掛かりもありませんが、確かに、瞬間を永遠に残しておくための試行錯誤はあった様です。

エルンストのメモによれば、ただの瞬間を何かに閉じこめておく試みといえば、同じくケルンの錬金術士が連想されるとのこと。それは重厚なガラスの球体に20年ほど閉じこめられ、再び放たれた瞬間から何の問題もなく現在に同調して、当時、閉じこめられなかったものと同じ時間をかけて消えていったそうです。

エルンスト自身は晩年、熱狂の継続という着想の出発点自体に、やや否定的な発言を残しています。

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