第12話『道士の夢』

マルコ・ポーロがフビライ・ハンに語った様々な都市の様子は全て真実ですが、フビライ・ハンがマルコポーロから聞いた事は全て物語でした。

全てのものに含まれる本当のことが、いかに不変のままで在り続けられるかを厳密に観測することを考えた道士が居ました。

最初はほんの好奇心でしたが、道士は見たままの事を誰かに告げる言葉に術をかけ、その有様に何か変化が起こる度に、どの様に変わったのかを記録できる様に工夫しました。

驚くべきことに、明らかな聞き間違いでもない限り、本当のことというのは、本当としては、ほとんど変化なく伝わっていくことがわかりました。結局は、その本当の事を人がどの様に扱うのか、それが定まらないため、本当のことですら様々な結果を起こすのだとわかりました。

道士は続いて、本当の中に含まれる本当の強さを計測することを考えましたが、本当というのはどこまでいっても本当に過ぎず、ただやはり、それをどう扱うのかということだけが、人と本当の間にあるということが、改めてわかりました。

道士はむしろ、本当そのものが変わっていくことを期待していたので、他にも様々な方法を試しましたが、芳しい結果は得られず、ただ、やりかたが何か間違っているのではないかと考えながら、日々を過ごしていました。

ある日、道士の夢枕に落ちぶれた神が立ち、道士が言葉にかけた術の勘所を教えるように乞いました。

その神はこの頃人々が自分の廟に訪れなくなったため、すっかり力を無くしてしまったのだと言います。そこで、道士の術にもう少しだけ何か工夫を加えて人々に本当が伝わった後に、廟に行かなければと考える様にするのだそうです。

力を無くしているとはいえ、相手は神です。道士は術のことを丁寧に教え、送り出しました。

夢からさめた道士は、いつか盛んになった廟の話しを聞くようになるだろうかと考えますが、どうなるかはまだわかりません。

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