第36話 ナオの日記 七月十日

 いよいよ明日、学級委員の選挙。

 何か、生まれて初めてガンバってる気がする。



「ナオの人気はクラスの中でカクジツに上がっている」



 そうなのかな?



「茂とさくらの問題をカイケツしたおかげで、仲間はずれもなくなったし」



 あっ、それはスゴくウレシイ。



「勉強も……まぁ、マシにはなってるな。全部ワタシのおかげだが」



 だって、口答えするとヒマワリの種ミサイル飛んでくるもの。



「気休めだが、何でもできるヤツがトップに立てるワケじゃない」



 …………どうせなら、もっと自信がつくコトを言ってほしかったよ。



「オマエはオマエだ。大丈夫……胸を張れ。そして、ゆくゆくは世界をセイフクするのだ!」



 気休めの後にこんなコト言われても。

 アルがね、部屋のガラステーブルの上で、一生けんめいアタシをヤル気にさせようとするの。アルってよくもわるくも正直だから、いまいちアタシを上げきれてないけど。

 世界セイフクはホントのトコどうでもいいんだ。けど、学級委員長にはなれる気がしてきた。自分でもガンバったって思うし。


 キモ試しの後、ホント恥ずかしかったけど、茂クンとさくらチャンに、世界セイフクのために学級委員長になりたいってコトを話したの。アルとトーエイ、そして鈴木くんのコトや、赤と青のオーラの話も交えて。

 二人とも最初、ビックリして目をまん丸にしてたけど、二人顔を見合わせて吹き出したかと思うと、すぐにそろってお腹をかかえて大笑い。目に涙をためるくらい。

 あぁ、言うんじゃなかった。ちょっとコウカイ。



「いや、いいよ! おもしろい! その考え……グッド! 世界セイフクかぁ……ボクも見てみたい。絶対に松平さんを学級委員長に推すね」



 さくらチャンもウンウンと何度もうなずいてた。何かそれだけで百人力って気分。

 アルたちと出会って、アタシ変わったよね?

 けど、一つ問題が残ってるんだ。


 しおりのコト。


 キモ試しのあの日、さくらチャンの机の前でしおりを拾った鈴木くん。さくらチャンの席の前は、泉チャンの席。

 茂クンが見たのは、泉チャンにしおりを見せてもらっていたさくらチャンだったワケ。さくらチャンはアタシのしおりだって知らなかったって。キモ試しの日に教えてくれた。


 学校でなくしただけだと思ってたのに、何で泉チャンがアタシのしおりを持ってるんだろう? 前に『カワイイしおりだね』って言ってくれたから、アタシのだって知ってるハズなのに。

 聞こう聞こうと思ったけど、何て言えばいいのか分かんなくて。

 今の今まで泉チャンにしおりの『し』の字も言えてない。

 って言うかアタシ……


 このごろ、泉チャンにさけられてる気が……

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