第35話 鈴木2号ジュニアの調査記録 六月二十九日
生まれて初めてのキモ試しですから。
キモ試しって何ですか? 美味しいですか?
師匠に聞いたら、怖いのをガマンするコトらしいですけど、夜の学校って怖いですか? そうですか? ボクは隠しておいた魚をお父さんに食べられてしまうのが怖いですから。
何でもナオセンパイが怖いのキライってコトで、師匠とイモリセンパイとボクで、夜の学校を明るく楽しく、ファンタスティックにしようという計画ですから。
ナオセンパイの栞を見つけられなかったオメイバンカイですから。
えっ? オメイさんはバンカイしないんですか? メイヨヘンジョウ? ん? メイヨさんもヘンジョウしない?
……オメイヘンジョウですから!
ハッピーキモ試し大作戦!
監修は青いオーラの三匹でお送りします。気合い入ります!
師匠は暗くてサビシイ音楽室に、ステキなメロディをお届けしていますから。
ピアノって美しい音色ですよね。ピアノを弾けるハムスター。さすがボクの師匠! 一生ついていきますから!
イモリセンパイはシーンとした廊下がサビシイと、床のライトの前で影絵フェスティバルを開催。
ナオセンパイのクラスの子供たち、みんなキャーキャーとスゴイ声援でしたから。イモリセンパイ芸達者です。
ただ、ナオセンパイと間違えて、廊下を歩く子たちに、天井からダイブするのはヤメた方がいいと思いますよ。しかも何度も何度も。落ちなきゃ分かりませんか?
イモリセンパイ、ヤコウセイですよね? ヤコウセイってどういう字ですか?
ボクはナオセンパイが怖がりそうなモノがないか学校中をくまなく調査。探偵の仕事は地味なんですよ。ピアノも弾けないし、影絵もできないけど、ボクは体力だけは誰にも負けませんから。
美術室の石こう……いや、プラスチックでできた人間の胸像。コレはダメ。暗い美術室に入ってこんなの見たら、ナオセンパイ気絶しちゃいますから。移動、移動!
さて、どこに移動しましょうか? 重いから、ちょっと休憩……
「キャー、ナマクビ!」
ん? ナマクビって何ですか? 何か階段の下から聞こえたんですけど。それらしいモノは周りにないですから。まぁ、知らないモノを探しててもしょうがないですし、また像を背負って移動しましょう。
結局、ナオセンパイの教室まで来てしまいましたから。
疲れたから像を教壇に置いて……
あれ? これは? 窓の近くの床に落ちているアナタは、もしかしてナオセンパイの宝物の栞さんでありませんか? あれだけ探して見つからなかった……あまり探さないで寝ちゃった気がするけど、ついに任務完了ですから。
ナオセンパイ、オメデトウゴザイマス! アリガトウゴザイマス!
え~っと、この席は……?
安藤さくら?
その子の席の前の方で、午後八時四十三分、栞さん、無事確保。
オメデトウゴザイマス! ささっ、カバンに入れてっと。
その後、みんなと合流する前にキュウケイしようと思って、理科準備室へ。
骨格標本やはく製に混ざってキュウケイしてたら誰かに尾羽をつかまれました。ビックリして大きな声出してしまいましたから。
「アー!! アー!!」
「キャー!! キャー!!」
鳥をビックリさせておいて逃げるとは、何て躾のできてない子でしょうか? 結局、ロクにキュウケイできなかったですから。
一階の廊下を跳ねていたら、大きな声を上げながら外へ走って行く女の子に遭遇。
ガラガラガラ!
それを追いかけるワックスの缶。うまく外へ出れずに、ガンガン音を立ててカベにぶつかっていますから。
「どこだ! ユウレイは? ワタシにまかせろ!」
その声は師匠! なぜに缶の中!?
ガンガンとカベにぶつかる缶をのぞき込みます。
「教師とかにバレるとマズいってナオが言ってただろ? だから隠れて追いかけてるんだ」
お~っと、さすが師匠! 弟子のコトを考えてのその行動。まさに師匠のカガミですから!
師匠の後について女の子を体育館まで追いかけたけど、女の子はユウレイに追いかけられてるらしく、トイレに閉じこもってしまいました。
えっ? 何ですか、師匠? 女の子の名前はさくら? ん? どこかで聞いたような気が……
さくらを助けるためドアを蹴破ろうとした時、ナオセンパイ登場。
女の子は蟲につかれてましたから。だからユウレイのマボロシを見てたのかな?
蟲を退治すべく、ボクの劈掛掌が火を吹いた……ら良かったのに、ボクは蟲を引きずり出すだけで、
イモリセンパイはそんな蟲を食べちゃうんですよ?
スゴイっす! イモリセンパイ!
ボクにもそのワザ、伝授してください!!
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