第27話 アルの手記 六月二十五日

 これだけは言わせてくれ。



 生きているってスバラシイ!!



 ワタシの名はアル・ロマノフ。青と赤のオーラを見るコトができる世界の支配者だ。

 今日は非常に疲れた。色々な意味で。もう詳しく書くのも面倒なくらい疲れたので、一行で書いてみよう。



『ナオが蟲の名前を呼んで、鈴木くんが蟲を引きずり出して、トカゲが蟲を食べる』



 う~ん……何がなんだか? これが青いオーラの力なのか?

 ナオが名前を呼んだコトで蟲がいる場所に赤いオーラが小さく集まっていく。見えるのはワタシだけなのだが、これはまぁいい。青いオーラの力だろう。


 鈴木くんが、ただ今勉強中の中国拳法、劈掛掌ひかしょうで蟲を体から引きずり出す。ペンギンが中国拳法ってどうかと思うが、これもまぁいい。青いオーラの力じゃないかな?


 問題はトカゲだ。

 誰もさわれなかった蟲に飛び乗った上、食べるってのはどういうコトだ? 体から引きずり出された蟲は、ナオよりも大きかったんだぞ? トカゲはカナブンに食らいついてアゴをはずすようなヤワなヤツだぞ? デタラメすぎるだろ? こんな青いオーラの力ってあるのか?



 ――ダメだ。考えれば考えるほど疲れる。



 鈴木くんにもキツク言っておかないと。もう少しマシな脱出をしてくれと。

 前もって言っておいてくれれば少しは覚悟が……できるかぁ!!

 窓から飛び出してからナオの家に帰ってくるまでの記憶があやふやだ。


 ワタシは生きてるぞ!!


 生きているってスバラシイ!!



 はぁ~~~、疲れた。

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