第21話 鈴木2号ジュニアの調査記録 六月二十五日
高い校舎ですねぇ……
見上げると首がイタくなりますから。
校舎の横に自転車置き場。その向こう側に、金網で囲まれた広いプール。
どれどれ? おおっ、動物園のプールより広いですから。
その先に――ああ、ありました。正面の大きなガラス戸はちょっと難しいですが、この裏口の扉だったら……この美しい黄色い毛で、こう……よっと。
ガチャッ……
ハイ、校舎に潜入成功。
ブルブルブルッ!
体を激しく振って。雨に濡れたままだと、学校を汚してしまいますから。
えっ? 校門はどうしたのかって? 校門は流石のボクも開けれないけど、その横の扉は朝飯前……もとい、朝魚前。だってボク、プロですから。
では、ちょっとクールにチャチャッと仕事を終わらせちゃいますから!
息を飲むほどの暗い校舎の窓ガラスから、校外に並ぶ家の灯りがうっすらと差し込んでいる。吸い込まれるような空はいつしか月も隠れ、こぼれ落ちた星のような細かい雨粒が、家の灯りを反射してキラキラと輝いていた。
どう? クール?
ハイハイ、保健室。ハイハイ、図書室。ハイハイ、相談室……相談室!?
小学生が将来設計の相談でもするんですかね? もしくは、健康管理?
ナオセンパイに地図を書いてもらえば良かったと後悔。小学校って思ってたより広いですから。園のプール百個分くらいはあるんじゃないですか?
さて、ナオセンパイは五年生だって師匠が言ってましたから、五年生のクラスは……廊下の曲がり角で首だけ出して安全確認っと。暗闇には何が潜んでいるか分からないですから。
この先は……えっと、階段を上るんですかね? それとも、ココを曲がると……ああ、校舎の南側にあった正面入り口の方ですか。取りあえず階段を……ヨッ……のぼって……ホッ……みましょう……トッ……かっ!
「うわっ!」
階段の踊り場のカベには大きなカガミ。どこのイケメンがいるのかと、ちょっとビックリしましたから。
あぁ、やっと教室を発見! 階段をのぼりきって右の方に一年生の教室。左の方は三年生の教室――えっ? 何でですか? 一年生の次は普通二年生じゃないですか? 二年生はどこへ行ったんでしょう? 摩訶不思議、野並小学校。
さらに階段を上がると……ありました、ありました。階段から右の方に五年生のクラス……四年生と六年生のクラスは!?
まぁ、用があるのは五年生のクラスですから。
ちょっと、廊下の途中にあるトイレの横のごみ箱の上でキュウケイ。暗いけど窓の外にプールが見えますから。さっき通ってきたトコはこの真下ですか。
さて、教室に入って……ん? 五年生の教室の隣は何の教室ですか? ちょっとのぞいて――いやいや、目的は五年生の教室ですから。
ガラッ……
好奇心には勝てませんでしたから。
教室の中は規則正しく並んだイスと机。けど、普段から使っている様子はありませんね。教室の隅に置いてある、ボクの体と同じくらいの太さの缶が五缶とモップ三本。何の缶でしょう? まぁ、それはどうでもいいですから。
パコン……
開けてしまいました。
ん? 何も入っていませんよ? じゃぁ、こっちの缶は……ワックスかな? 暗くてよく見えないけど、ドロッとしたモノが缶いっぱいに入っていますから。
取りあえず面白そうなモノは見当たりませんから。机に飛び乗って、真っ暗な窓の外を見てみましたけど、ついさっきから強く降りだした雨で、景色がよく見えませんから。
窓の向こうにも別の校舎があるのと、体育館らしき大きな建物のカゲが見えるくらいですから。
ハッ、寄り道しすぎましたから。黒板の上の時計が二時を指している……気がしますから。近くによって見上げても、暗すぎてよく見えませんから。早々に目的のモノを探さないと。
……ん? ……おや?
五年生の教室に入ってすぐ、ナオセンパイの机を発見。
机の中には道具箱。探すモノは栞ですから。師匠とナオセンパイがそう話してましたし。
…………どんな?
はて? 聞いた覚えがないですから。確かイモリセンパイはナオセンパイの『宝モノ』って言ってましたから。宝モノっぽい栞……宝モノ…………魚かな?
う~ん……栞、栞……宝モノ……魚……う~ん……
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