第15話 アルの手記 六月二十一日

 いくら梅雨とは言え、こうも天気が悪いと体にカビが生えてきそうだ。



 ワタシの名はアル・ロマノフ。世界のゆがみを正すために世界征服を目指す、ロボロフスキーハムスターだ。



 突然だが、ワタシには手下がいる。



 まず一匹目は、自称ヤモリのイモリトカゲとか言う、フワッとしたヤツだ。

 コイツがまた困ったヤツで、アゴの力がスゴく弱く、かみついた勢いで最悪アゴの骨を折ってしまうというひ弱っぷり。


 先日はカナブンにかみつき、アゴがはずれたと大騒ぎ。

 そもそも、自分の口よりはるかに大きいモノを見て、なぜかみつくという行動に出られるのか? ワタシにはサッッッッッッパリ、分からない。

 目が非常に悪いのか、はたまたオツムが人並みはずれて残念なのか……まぁ、後者であろう。人ではないのだから……




 さてもう一人、これまた大変なヤツなのだが、ナオという名の人間である。

 ワタシが世界征服をする上で、最も重要なポジションにいるにも関わらず、とにかく無能。

 勉強も運動も本当にサッパリ、丸っきり、全然、ダメ。

 人間なのだから、そこはせめて人並みであってほしかった。


 さらに、カリスマ性もチャレンジ精神も、『トゥヴァのワカメ』状態。

 ん? どういう意味かって? 『存在しない』という意味の、一族のコトワザだ。


 世界征服の足がかりに、まずナオを学級委員長の座につかせるため、ワタシが勉強を教えるコト一週間……


 勉強が苦手? ふむ、そういうコトもあるだろう。

 何をどうすればいいか分からない? 苦手なのだからな。まぁ、それもしょうがあるまい。

 しかし、ナオを甘く見てはいけない。


 『そんな計算は大きくなっても使わない』とか『それは漢字じゃない方が読みやすい』とか、極めつけは『理科なんて知らなくても生きていける』ときたモノだ。


 何と言えばいいのだろう?

 こちらも常に大人の対応をしているつもりなのだが……



 イィーッてなるわ、イィーッって!!



 もっともらしい理由をつけているが、最初からやるコトをあきらめているヤツが、『苦手』とか『キライ』なんて言葉を使うんじゃない!!

 ナオに必要なのは勉強するコトもだが、すべてにおいて『やる気』を持つコトだ。


 覚悟しろよ。ワタシはあきらめが悪いぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る