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「実はね、今年の学園祭でこの子をミスコンで一位にさせる予定なの」
両手で持ったグラスを覆い隠す様に俯いた彼女の肩がビクン、と揺れる。
「絶対この子はミスコンで一位を取れると思うの。今は猫背だから分からないかもしれないけれど、スッと伸ばしたらあたしと変わらないくらい背があるし、顔もいいから絶対いけると思う。あたしの目に狂いはないわっ。ね、この子ならマスターも取れると思うでしょ?」
うっすらと赤くなったトガシ君は饒舌に言って小首を傾げて訊いた。彼女は微動だにしない。
正直取れるかどうかは分からないけれど、彼女が美人だってことは分かる。きっと普段の彼女を知っている人がミスコンで急に見違えたような姿を見れば驚くだろうね。だから、頑張って欲しいなって思う。
下を向いて生きるよりは上を向いた方が何倍も息が楽だから。
「応援していますよ」
「ね、ほらマスターもこう言っているし、アンタなら大丈夫よっ頑張りましょっ!」
トントン、と言うよりは、ドンドン、に近い勢いでトガシ君は彼女の背中を叩く。顔を上げた彼女はまた困ったような顔で、だけどどこか笑顔の混じったような顔で「胸がないのだけが残念だけどね」
ドンッとトガシ君の身体が揺れた。やっと顔を上げた彼女はまた猫の背中になって顔を隠す。
あーあ、もうトガシ君ったら。オネェたる者いつだって女性目線でいなくちゃだめじゃないのさ。
「良いのよ、胸が無くたって胸を張って生きれば」
それでもへこたれないトガシ君は彼女に向かって言った。もう随分と赤い顔で。
「誰が何と言おうがあたしがアンタを誰もが認める美人にしてあげるんだから」
彼女の肩が呆れたように小さく下がった。
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