第3話 来訪

女子高生と会わなくなり、数週間・・・

ホッとしている半面、少し寂しい気持ちでい自分がそこにいた・・・


それからしばらくして、家のアパートのベルが鳴った。

ドアを開けると、そこには初老の紳士が立っていた。

「失礼ですが、絵師の東一(あずま はじめ)様ですよね」

「そうですが、何かご用でしょうか?」

頭に、元をつけないのが、いかにもという感じだ・・・

「ぜひ御同行頂きたいのですが、車でお送りいたします」

普通なら、断るだろう・・・


でも、失う物はないし、暇なので、付き合ってやることにした。

アパートの前には、高級リムジンが止まっていた。


20分程すると、大きなお屋敷に到着した。

「こちらへどうぞ」

初老の紳士に案内され、屋敷の中に入る。


「東様をお連れしました」

そこでは、大勢のメイドさんが出迎えてくれた。

出迎えたというのは、正しくないのだが・・・

(メイド喫茶じゃあるまいし・・・)


広いリビングに通される。

しばらくここで待つように指示を受けた。


メイドさんが、紅茶とケーキを持ってきてくれた。

「それにしても、立派だな」

動物のはく製が、たくさん飾ってある。


トントン

そこへ部屋をノックする音がした。

「どうぞ」

俺は声を掛けた。


すると、見知った女子高生が入ってきた。

制服ではなく、ドレスに身を包んでいるが、すぐにわかった。

「おじさん、久しぶり」

「お前は?」

「びっくりした?私はここのプリンセス」

「ああ、驚いたよ。でも自分で、プリンセスっていうか?」

「お嬢様って、言葉は嫌いなんだ」

こいつらしいなと思ったが、口にしなかったのは言うまでもあるまい・・・


「元気そうだな」

「それだけが、取り柄だもん」

「しばらく会わなかったからな・・・」

「もしかして、心配してくれてた?」

痛い所をつかれたが・・・


「だれが・・・」

「照れない、照れない」

女子高生が、いたずらっぽく笑う。

でも、悪い気はしなかった。


「パパは、お上品にお出迎えしなさいといったけど、私のキャラじゃないのよね」

「わかるよ。お前は、憎まれ口を叩くくらいが丁度いい」

「おじさんも、相変わらずだね」

嬉しいような、懐かしいような、そんな気持ちだった・・・


しばらくすると、再度部屋がノックされ、男性が入ってきた。

(あれ、見た事あるような)

「パパ、この方がお話した人だよ」

「そうですか・・・娘がお世話になりました」

「・・・いえ・・・私は何もしていませんが・・・」

(この子はどういう風に話したんだ)

女子高生を見たが、微笑むだけだった。


「東様、いや、東先生とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

「東さんで、構いません。引退した身ですので・・・」

「いえ、東先生と呼ばせて頂きます。先生は私の目標でしたので・・・」


俺には意味がわからなかった。


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