第14話
「大丈夫。
水樹さんはいくつになっても水樹さんだよ。
綺麗で優しい」
フラレてもいい。
今、告白しないと後悔する。
そんな気がしたから……
「ありがとう。
そういってくれるのは鈴鹿くんだけね」
「そんなことないよ。
みんな思っているけど口に出さないだけだよ」
「本当に嬉しいことを言ってくれるのね」
「本当のことだよ」
「ありがとう。
じゃぁ……私も転生して貴方に会いに行くわ」
「え?」
「もう自分が長くないことを知っているから……」
「そんなこと――」
そんなことない。
そういいたかった。
でも、いえなかった。
水樹さんに嘘はつきたくない。
たとえ優しい嘘でも傷つくことがあるのを知っているから。
「ありがとう。
鈴鹿くんは本当に優しいのね」
僕は涙をこらえる。
泣かないように泣けないように歯を食いしばった。
「……」
歯を食いしばる。
だから言葉が出せない。
「神さまにお願いして早く転生するようにするね。
私、貴方が迎えに来るのをずっとずっと待っているから」
「うん。絶対に迎えに行く」
「じゃ、ゆびきり……ね」
「え?」
「約束の合図」
「うん」
僕の小さな指と水樹さんの指。
せっかく追いついたはずの手の大きさが更に差が開いてしまっていた。
「ゆびきりげんまんうそついたら――なににしましょう?」
「ハグの刑」
「甘えん坊さんなのね」
水樹さんがそういって笑う。
「うん、僕は甘えん坊でわがままだよ。
変わらないよ、ずっと変わらないよ」
「そうね。かわらないのね。
変わらないのは人のいいところでもあるわ」
「うん」
「じゃ、私が先に見つけたら鈴鹿くんのことを抱きしめるね」
「うん」
「ありがとう。そしてさようなら」
水樹さんが呼吸をひとつ吸い込む。
その息は吐き出されることはなかった。
ずっとずっと永遠に……
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